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» 2022年01月12日 10時00分 公開

【第4回】人口減時代を乗り切る、地場ゼネコン2社の“サステナブル・モデル”事例報告建設専門コンサルが説く「これからの市場で生き抜く術」(4)(2/3 ページ)

[百井岳男(タナベ経営 経営コンサルティング本部 部長),BUILT]

I-1.軟弱地盤という悪立地が育んだ技術開発の気質

 同社の歴史は水害との戦いであった。本社の立地する愛知県南西部は、「東海の潮来(いたこ)※1」と称される水郷の町で、海抜ゼロメートル地帯である。地下水位が非常に高い軟弱地盤で、古来より浸水被害に悩まされてきた。この厳しい環境を克服するため、パワーブレンダー工法など数々の地盤改良技術の開発を手掛けてきた。

 加藤建設がこれまで歩んできた成長過程をみると、ターニングポイントは大きく4つに分けられる。

※東海の潮来:水運の要衝として知られる茨城県南東部の潮来市

加藤建設の4つのターニングポイント

 4つのターニングポイントをみれば、全国有数の軟弱地盤という悪条件と、時流を捉える目利き力を持った3代目社長 加藤弘氏の存在が、地場建設会社にとって共通の課題である「差別化の壁」「全国展開の壁」を突破する原動力となったことが窺(うかが)える。

 同氏は、地元を商圏とする中小工事会社の成長の限界を強く認識し、独自技術を獲得して同業他社との差別化を図り、全国へ展開することを志向していたという。そして、ある工法が全国に普及する初期から自社に取り入れるとともに、段階的にオリジナルの工法開発へ結実させていったのである。

I-2.特殊工法開発の「ハードパワー」と自然との共生「ソフトパワー」の融合

 また、積極的な工法開発とともに同社の大きな特徴となっているのが、「エコミーティング活動」である。4代目社長 加藤徹氏(現・代表取締役会長)が社長就任以来、注力している取り組みで、自然環境への配慮を工事に反映させていく活動である。

 具体的には、工事開始前に現場内や現場周辺を調査し、それを受けて工事・営業・技術・環境担当のほか、事務部門や女性社員も加わりミーティングを行う。ミーティングでは、自然環境とコミュニティーづくりに配慮した工事現場を整備するための「提案書」を作成する。その提案書を基に、現場の生態系を表した「環境掲示板」を掲示し、周辺住民へ啓発するとともに、工事完了後もモニタリングを行い可能な限り生態系の保全・復元に努めている。

 生態系保全に手腕を発揮するビオトープ管理士は111人と、従業員数の4割弱に及ぶ。こうしたエコミーティング活動は各方面から高く評価されており、2012年には愛知県の「愛知環境賞銀賞」を、2015年には環境省「第3回グッドライフアワード」の「環境と企業」特別賞を受賞している。特殊工法開発という「ハードパワー」と、自然との共生という「ソフトパワー」の融合により、「ソリューション型ビジネスモデル」を確立させたのである。

「第3回グッドライフアワード」で「環境と企業」特別賞を受賞した加藤建設の取り組み 出典:環境省「グッドライフアワード」Webサイト

II.ワンストップソリューションシステムで地域密着を進める「須山建設」

 須山建設は1905年に創業し、土木事業を祖業とする創業100年を超える総合建設会社である。静岡県西部エリアの浜松市で庁舎や学校などの公共施設をはじめ、商業施設などの建築物から環境整備まで、事業企画・設計から、施工、維持管理までをワンストップサービスで幅広く提供している。また、9社から成るグループ会社各社で、舗装工事、下水道推進工事、リフォーム、建設仮設レンタル、不動産、サービス付き高齢者向け住宅の経営、建築構造設計、空調設備など建設関連事業を多角的に展開している。

 企業規模は、グループ連結で売上高約300億円、営業利益約20億円、売上高営業利益率約7%、社員数約400人(2021年3月期)。高い収益力だけでなく、無借金経営と財務安定性にも優れている。事業は、環境ブロック(土木事業)、都市ブロック(建築事業)、マンションブロック(賃貸マンション事業)に大別され、売上高の構成は、それぞれ36%、50%、14%。このうち、自社の設計施工物件は50%に及ぶ。

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