本連載では、日立ソリューションズの建設ICTエバンジェリストが、建設業界でのセンサー技術の可能性について、各回で技術テーマを設定して、建設テック(ConTech)実現までの道のりを分かりやすく解説していきます。第2回は、高精度に位置情報を測位できる「GNSS」「RTK-GNSS」について、それぞれの測位の仕組みと建設現場での用途を紹介します。
連載第1回では、スマートフォンに搭載されているさまざまなセンサーについて紹介しましたが、前回紹介していないもので重要なセンサー技術がありました。皆さん、お気付きだったでしょうか?
それは、「GNSS(Global Navigation Satellite System)センサー」です。GNSSではなく、GPS(Global Positioning System)と呼んだ方が多くの人には馴染(なじ)みがあるかもしれません。GPSは、正しくは米国が打ち上げた測位用衛星システムの名称です。近年は欧州、中国、ロシア、日本が測位用衛星を打ち上げており、それらを総称してGNSSと呼称します。実はスマートフォンに搭載されているGNSSセンサーは、さまざまな測位用衛星に対応しています。
日本のGNSS衛星は「みちびき」の愛称で知られており、つい先日(2021年10月26日)にも「みちびき」初号機の後継機が打ち上げられました。計画では、2023年までに計7機の運用を目指しています。
みちびきは、高精度に測位ができるということを聞いたことがありますか?GNSSはGNSS衛星からの信号を受信して位置を測位しますが、大気圏や電離層※の影響で測位誤差が生じます。その点、みちびきは測位誤差を補正する信号を発信しており、信号を受信し、補正処理することで測位精度を10センチレベルまでに引き上げられます。しかし、補正信号を受信できるアンテナはまだ価格が高く、広く普及している状況ではありません。残念ながら、スマホにも搭載されていません。
※ 電離層:地球を取り巻く大気の上層部にあり、電波を反射する性質がある層
スマホに搭載されているGNSSセンサーは、衛星の電波の受信状況にもよりますが、一般的にはおおよそ10メートル程度の精度で測位できると言われています。これは単独測位と呼ばれる方法で、1台の受信機が4機以上の測位衛星からの電波を受信することにより、受信機の位置を決定しています。しかし、測位衛星からの電波が対流圏や電離層を通過する際の電波遅延などの影響を受けるために、誤差が発生してしまうのです。
ただし、前述のようにさまざまな測位衛星が打ちあげられているため、同時に受信できる衛星数が飛躍的に上がっています。そのため、最近では単独測位でも安定して測位することが可能になりつつあります。
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