大成建設は、タワークレーンを搭載した専用鉄骨フレームを上昇させて施工する「テコアップシステム」を開発した。現在、北海道札幌市で計画を進める「北8西1地区第一種市街地再開発事業」のRC造高層集合住宅にテコアップシステムを初適用し、工期短縮に伴うコスト低減とCO2排出量の削減を推進している。今後は、新システムの建築工事への適用を図るとともに、高層建築物の自動化施工および全天候型(全閉)施工が可能な工法として、技術開発を進めていく予定だ。
大成建設は、高層建築物の環境配慮解体工法「テコレップ」に用いた仮設架構昇降技術を新築工事に応用したものとして、タワークレーンを搭載した専用鉄骨フレームを上昇させて施工する「テコアップシステム」を開発したことを2021年10月25日に発表した。
RC造高層建築物の施工に用いるRC積層工法では通常、タワークレーンを設置した床版をクレーンとともに上昇させるフロアクライミング工法を使用する場合、下の階に5フロア程度の開口部を設けてタワークレーンの支柱を備える。
そして、RC積層工法は、各フロアの床版コンクリートを一度に打設できないため、支柱周辺の開口部では雨水養生や止水処理が必要となり、施工効率に問題があった。さらに、タワークレーンは、施工時に建物外部あるいは中央開口部に配置することから、取り付け場所が限定され、最も遠い場所に揚重物が届くようにするためにはクレーンサイズを大きめに設定しなければならず、コストアップを招いていた。
そこで、大成建設は、上記の課題を解消するために、タワークレーン一体型クライミングシステムのテコアップシステムを開発した。
テコアップシステムは、タワークレーン、専用鉄骨フレーム、門型フレーム、ジャッキ、かんぬき梁(はり)、水平支持部材、、本設PCa柱、反力ブラケット、反力冶具で構成される。使用する際には、柱頂部の反力冶具からジャッキ下部まで配置された吊材「ストランドワイヤ」を用いて、クレーンを搭載した鉄骨フレーム全体の重量を支える吊(つ)り構造を構築し、工事進捗に合わせてクレーンを鉄骨フレームごと吊り上げて移動させる。
新システムによるジャッキアップの手順は、まず、タワークレーンを装着した専用鉄骨フレームのジャッキアップを完了する。次に、上階にPCa柱を設置・伸長後、柱ジョイント部にグラウト材を充填し、強度が発現するまで保持。続いて、伸長したPCa柱頂部に反力治具を移設し、反力部を盛り替える。その後、反力冶具からジャッキを介し鉄骨フレーム下部まで吊り材を配置し、ジャッキアップして吊り上げる。
今回のシステムは、建物の上階に先行して施工した本設PCa柱を利用して、タワークレーンを設置した専用鉄骨フレームをクライミングすることが可能で、本設柱の構造種別(RC柱、鉄骨柱)に影響を受けず、全ての建築物に適用する。そして、ジャッキシステムに利用する柱頂部の反力冶具仕様を変更するだけで、新築・解体工事にも使える。
加えて、新規開発した天井クレーンを専用鉄骨フレーム下部に設置し、梁部材や床部材の取り付けを効率的に行える他、天井クレーンはフレーム長辺方向だけでなく、直交する短辺方向への移動にも対応する。
新システムの利点は、本設PCa柱を利用してタワークレーンを搭載した専用鉄骨フレームを1フロアごとに上階へ移動させ、従来の開口部を有する場合と比べ、躯体床と干渉せずに施工を行える点。また、専用鉄骨フレーム上であればタワークレーンの設置場所を自由に選べることから、クレーン揚重能力を最適化し、従来よりも小型サイズのタワークレーンを選択できる。
さらに、システムを活用することで、従来のタワークレーンクライミング期間が短縮され、クレーンを積んだ専用鉄骨フレームにより直下階での部材取り付けや床版コンクリート打設を後施工で行える。そして、床版に開口部を設けることなく小型クレーンによる施工が可能で、躯体補強なども不要となるため、工期短縮によるコスト低減とCO2排出量の削減が図れる。
既に、大成建設は、北海道札幌市で計画を進める「北8西1地区第一種市街地再開発事業」で、RC積層工法を用いた高層建築物「A棟」の新築工事に適用している。
北8西1地区第一種市街地再開発事業 A棟は、RC造地下2階/地上48階建てで、延べ床面積は9万8373.65平方メートル。開発地は北海道札幌市北区北8条西1丁目。
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