支柱の組立・解体が1日で完了する大型仮設支保工「T-CAPS」、“新国立競技場”の屋根架設工事に適用

大成建設は、大空間屋根工事や大型橋桁工事で使用される仮設支保工に、建築工事で汎用的に使用されているタワークレーン支柱を活用した大型仮設支保工「T-CAPS(Taisei-Climbing Adjustable Post System)」を開発した。現在、施工中の「新国立競技場整備事業 屋根鉄骨架設工事」に適用されているという。

» 2019年02月12日 07時00分 公開
[BUILT]

 大成建設は、大空間屋根工事や大型橋桁工事などに使用される仮設支保工に、建築工事で汎用的に使用されているタワークレーン支柱を活用した「T-CAPS(Taisei-Climbing Adjustable Post System)」を開発した。T-CAPSの適用で、組立・解体の大幅な効率化が図れ、工期短縮、コスト削減および安全性向上も実現する。

支柱の組立・解体はわずか1日で完了、コストも最大7割カット

「T-CAPS」架設状況(イメージ) 出典:大成建設

 従来、屋根や橋桁など重量構造物の仮設支保工として使用される支柱部材は、施工条件(支柱の高さ、軸力など)に合わせ、小型の既存リース部材を組み合せていた。

 支柱の負担する軸力が大きくなるケースでは、複数本の柱部材などを組み合わせた組柱形式の仮設支保工を採用することが多く、施工条件に応じて使用部材などを個別に新規製作するため、仮設支保工の計画、計算、製作、組立・解体に多大な時間と労力を要し、仮設工事費が高騰する要因になっていた。

 また、複数の施工箇所で使用される支柱の組立・解体では、その都度、安全施設・昇降設備などを設置・撤去する必要があり、その労務や部材数量も付帯的に増大する。

 さらに、解体時には、支柱上部に施工済みの構造物があるため、解体作業の初期にはクレーンを使えず、高所での人力作業が余儀なくされていた。支柱を繰り返し使用する工事では、組立、解体作業が続くことから、工事全体の工程やコストに大きく影響することがネックだった。

仮設支保工の比較 出典:大成建設

 大成建設は、これらの課題への対応策として、大型仮設支保工T-CAPSを開発。T-CAPSは、タワークレーン支柱の壁面部を取り囲むように設置された作業足場が支柱に沿って昇降可能で、作業足場に備えた2層の作業床や支柱内に装備されている昇降設備を使用して、効率的に組立・解体を行える。

 汎用型のタワークレーン支柱を利用することで、仮設支保工に用いる部材数量の削減と組立・解体の効率化が図れ、使用部材の転用率を大幅に向上できるため、同一形状・断面により構築される構造物での繰り返し施工に、仮設作業の著しい効率化が可能となる。

 仮設支保工では、解体時に作業足場を降下させ、構造物直下に空間を確保することで、クレーンを利用した直接解体が可能になる。従来の仮設支保工を用いた工事では、作業毎に設置が必要であった安全設備、昇降設備などの付帯的な仮設設備が昇降式作業足場等にあらかじめ装備されているので、組立・解体時の作業労力、使用部材数量を大幅に削減する。

 従来の小型部材による組柱形式の仮設支保工では、組立・解体日数が合計7日程度必要とされていたが、支柱の組立・解体はそれぞれ1日で完了する。コスト面でも、組立・解体時の作業労力、使用部材数量の改善で、T-CAPSを100箇所に適用し、4回程度転用する計画を想定した場合、組柱形式に比べ、6〜7割程度が削減できるという。

 また、これまでの組柱形式では、高所での人力による解体作業が必要だったが、解体時に作業足場を降下させ、構造物直下に空間を確保することで、クレーンによる直接解体が可能なため、作業時の安全が確保される。

「T-CAPS」構成部材および構造物支持、解体・転用状況 出典:大成建設

 T-CAPSは、現在施工中の新国立競技場整備事業 屋根鉄骨架設工事に適用されている。今後は、大空間屋根工事、スタジアム、大型橋桁などへ積極的に適用を図っていくとしている。

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