「建設総合統計」に見る建設市場の動向、「手持ち工事高は豊富で短期は堅調」建設業の人材動向レポート(32)(1/2 ページ)

本連載では、ヒューマンタッチ総研が独自に調査した建設業における人材動向について、さまざまな観点で毎月レポート。今回は、国交省の「建設総合統計」を基礎資料に、建設市場の動向を探っている。

» 2021年04月30日 10時00分 公開

 今回の連載は、建設業の市場環境について分析する際に有効なデ−タを得ることができる主要統計の一つ、国土交通省の「建設総合統計」から最新のデータを紹介する。

 建設総合統計とは、建設工事受注動態統計調査と建築着工統計調査を基に、我が国における建設工事の出来高及び手持ち工事高を月別、地域別、発注者別、工事種類別などに推計してまとめたものである。

■建設工事の出来高は2011年以降は増加傾向、2020年には52兆3925億円に

 建設業における売上高に当たる工事の出来高(契約済みの建設工事の請負金額のうち、施工が完了した部分に相当する金額分)の推移を長期時系列で見ると、1991年に86兆3860億円で頂点を迎えたが、バブル経済の崩壊とともに減少局面に陥り約20年間にわたり市場規模は縮小傾向が続き、2011年には42兆752億円にまで減少した(図表1)。

 その後、2011年の東日本大震災による復興需要や景気回復に伴う民間の建設投資の回復を背景に、出来高は増加傾向となり、2011年の42兆752億円から2019年には53兆434億円にまで拡大したが、2020年には微減して52兆3925億円となった。

【図表1 建設工事出来高の推移】 出典:国土交通省「建設総合統計」よりヒューマンタッチ総研が作成

■2020年は民間工事の不振を公共工事が下支え

 2020年の出来高を対前年差と対前年比を発注者別、工事種類別に見ると、「民間建築・居住用」が対前年差1兆2408億円の減少(対前年比▲7.7%)、「民間建築・非居住用」が同8528億円の減少(同▲8.0%)と大きく落ち込んだのに対して、「公共・土木」は同1兆2558億円の増加(同+7.3%)となり大幅増となっている(図表2)。公共の工事の出来高は、建築・居住用、建築・非居住用ともに前年を上回っており、2020年は民間工事の落ち込みを公共工事の増加が下支えすることで、全体としては微減にとどまっていることが分かる。

【図表2 2020年の発注者別、工事種類別出来高の対前年差と対前年比】 出典:国土交通省「建設総合統計」よりヒューマンタッチ総研が作成
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