鹿島建設は、建設現場で粉じんが飛び散るのを防ぐため、環境に配慮した材料を用い、5カ月以上の耐候性を有する粉じん飛散防止材を開発した。既に、本材料を東京外環自動車道市川中工事に適用し、その有効性を確認している。
鹿島建設は2021年4月8日、生分解性と耐候性を有し、環境に優しい粉じん飛散防止材「MAKマクフォーマー.20」を開発したことを発表した。
MAKマクフォーマー.20は、生分解性と水生生物に対する安全性、さらには紫外線や降雨、強風などへの耐候性も備えているため、現場周辺環境への影響を低減。散布直後から粉じん飛散防止効果が発現し、散布した翌日には土壌被膜が形成され、効果は5カ月以上持続するという。
開発の背景には、建設工事では現場周辺への影響を低減するため、粉じんの飛散を極力防止する対策が必要で、散水やシート養生などが使われているが、それぞれ施工性・確実性などの課題を抱えていたことがある。
また、従来の粉じん飛散防止材の散布は、簡易かつ安価に施工できる一方、生分解性と耐候性という相反する機能を兼ね備えた材料はこれまでほとんど無く、粉じんの飛散防止効果を確実かつ長期間持続する材料が求められていた。
MAKマクフォーマー.20は、生分解度を「プラスチック−呼吸計を用いた酸素消費量又は発生した二酸化炭素量の測定による土壌中での好気的究極生分解度の求め方(JISK6955:2006準拠)」で確認した。
水生生物に対する高い安全性を「ヒメダカを用いた魚類急性毒性試験(OECD、JIS K 0102:2016準拠)」により確認(LC50=Median Lethal Concentration(半致死濃度)が100ミリグラム毎リットル以上=毒性が低い)。生分解性だけでなく、紫外線、降雨、強風などへの耐候性にも優れながら、既製品と同等の価格を実現している。
施工手順は、最初の作液段階で、MAKマクフォーマー.20と水を混合後にハンドミキサーで攪拌(かくはん)。おおよそ1平方メートルに対し2リットルの容量で施工区画へ散布し、土壌に被膜が形成されるまで1日放置して完了する。
粉じん飛散防止の効果試験は、NEXCO東日本発注の鹿島JVが施工者となっている「東京外環自動車道市川中工事」で、施工場所の中で計測地点を設定し、送風機とデジタル粉じん計を約3メートル離れた場所に設置。建設機械にかかわる粉じん基準の粉じん飛散量0.6ミリグラム毎立法メートル(mg/m3)未満を基準に、2020年7月12日〜11月30日の5カ月間にわたって測定した。
試験では、送風機で風速毎秒5メートル前後の環境を作り出した。散布前試験では基準値を超過していたが、散布翌日から5カ月後までの試験期間で、基準値を大きく下回り、粉じん飛散防止効果が長期間持続することが実証されている。
今後の展開は、MAKフォーマー.20の適用を進めるだけでなく、耐候性を生かし、平面だけでなく法面の侵食防止、さらには種子吹付けによる法面緑化工事など、用途拡大も図っていく。
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