【最終回】日本のBIM先駆者が遺す「BIMの先にしか実現しないDXという未来」BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(16)(2/3 ページ)

» 2021年03月29日 10時00分 公開

IWMS(Integrated workplace management system)

 BIM連携による維持管理・運用システムとの連携について解説したが、実はどのような維持管理・運用を行うのかが重要である。基本的には、EIRのAIRで記載されるべきものである。日本では、施設管理や保守管理などの取り組みが主だと言われているが、会社経営を含め、職場やエネルギー・人材などリソースの使用を最適化するのに役立つとされる「IWMS(統合型ワークプレース管理システム)」が注目されている。IWMSは、「不動産管理」「資本プロジェクト管理」「施設管理」「保守管理」「持続可能性とエネルギー管理」といった5つの機能を軸に、これらを統合化したプラットフォームであり、Archibusもこれに対応している。これらの機能は、現状でも実施されていないわけではないが、現状は個別のシステムの運用で、横断的なデータ活用がなされているわけではない。

Archibus 25.1

BIMの成長指標とDXへの道

 今回、連携事業の維持管理・運用フェーズについて言及したのは、一つ理由がある。これまで、BIMというものは、設計・施工と言った建物を作るための仕組みとして、一般的には捉えられているように思う。しかしながら、そのように考えていたら、その先にはつながらない。その先につなげるためには、建設業で閉じている情報を外に出す必要があるのだ。そういう意味で、設計・施工の情報を、竣工後の建物の維持管理・運用フェーズに連携し活用するのが、第一歩であると考えた。例えば、IWMSのような竣工後の維持管理・運用まで含んだ建物情報の統合化は、建物情報の価値を高め、収集・分析・活用といった段階に進むと考えられるからである。

 維持管理のその先にあるBIMの未来については、連載第2回で紹介した「拡張BIMレベル」で示している。

拡張BIMレベル(Extended BIM Level)

 この表についてあまり触れていなかったので、改めて補足しておく。BIMの成長指標は、sBIMからeBIMまでの3段階あるが、日本企業の多くが、sBIMの状況である。eBIMの段階をDXのレベルに照らし合わせると、Di(Digital Patch)が相当し、建設業務全般の情報がデジタル化できるという状況を意味する。

 さらに、建物データベースによるビッグデータの情報が収集・分析・活用といったことができるのが、Di(Digital Integration)である。それらの情報が整備されれば、そこからDXの時代が来て、建設業界が大きく変わってゆくことであろう。Archibusはデータベースのため、建物のデータベースとして機能させたいと考えている。

拡張BIMレベルについての説明

 今では誰もが建設業のDXを望んでいる。DXについての解釈や理解もさまざまあると思うが、私はBIMの進化の先にようやくDXが見えてくると思っている。この考え方は、私の個人的な意見ではないことを、イギリス政府が2015年に発行した「Digital Built Britain -Level3 BIM戦略計画」を読んで確信した。

Digital Built Britain -Level3 BIM戦略計画(一部)

 参考までに、この資料に記載されている「BIMとは何か」という文章を引用しておく。

 ビルディング情報モデリング(BIM)とは、物理的な建築物の設計、納入、維持管理をより効率的に行うためのデジタル技術に裏打ちされた協働作業の方法である。BIMは、製品や資産の主要なデータを3Dのコンピュータモデルに埋め込み、初期のコンセプトから運用まで、資産のライフサイクルを通じて情報を効果的に管理するために使用される。BIMは、建設部門の情報通信技術(ICT)と伝統的な業務プロセスを大きく変えるものと言われている。世界の多くの国が、BIMがもたらす機会を認識し始めており、現在、独自の能力を開発するために多額の投資を行っている。BIMプロセスは現在、新しい建物とインフラの両方で主流となっており、レーザー調査技術やリアルタイムなエネルギー分析などの補完的な技術が必要とされている改修・改装プロジェクトでも大きな価値を持ってゆく。

※DeepLによる翻訳を筆者が一部加筆修正

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