セミナーの後半では、パナソニック システムソリューションズ ジャパンの野口氏が登壇し、現場マルチネットワークサービスの事業モデルに触れた。
パナソニック システムソリューションズ ジャパンの野口氏は、「現場マルチネットワークサービスでは、ソフトウェアやエッジデバイス、ネットワーク、SI、システムエンジニア(SE)、フィールドサポートを当社でパッケージ化したものを用意する他、防災無線や業界向け無線などをパッケージした従来のサービスモデルも提供する」と話す。
さらに、「ネットワーク、ソフトウェア、エッジデバイスは当社の製品で提供可能だ。優れた実績を持つエッジデバイスやソフトウェアを豊富に保有している。エッジデバイスやソフトウェアを組み合わせて、現場の問題を解決したDaigasグループの泉北製造所第1工場における事例を紹介する。大阪府堺市にある泉北製造所第1工場では、液化天然ガスを扱うため、敷地内の全区域が防爆区域となっており、通信距離が短いWi-Fiを構築するには、アクセスポイントを防爆対応にしなくてはならず、その費用が多額となることが無線通信エリアを構築する上で課題となっていた。そこで、当社は防爆型Wi-Fiより安価に通信環境を整備できるプライベートLTEを紹介し採択された。また、泉北製造所第1工場は現在、プライベートLTEを用いた通信の活用を目的に、遠隔の点検や指導、立ち合いを実現するソリューションの導入を検討している」とコメントした。
現場マルチネットワークサービスで提供可能な通信ネットワークは、プライベートLTEシステムやローカル5Gシステム、Wi-Fiの3種類。プライベートLTEシステムは、プライベートLTE「自営BWA(Broadband Wireless Access) 2.5GHz」※1の他、2021年6月には1.9GHz帯の周波数に応じたプライベートLTE「sXGP」も実装する。
※1 自営BWAとは、地元密着型の通信「地域BWA」用に割り当てられている2.5GHz帯の帯域において地域BWAで使われておらず、かつ使われる予定がない場所で、自営無線として利用するネットワークを指す。地域BWAとは、地域広帯域移動無線アクセスの略称で、2.5GHz帯の周波数における電波を使用し、公共サービスの向上の解消など、地域における通信環境の公共性に貢献することを目的とした電気通信業務用のネットワーク。
ローカル5Gシステムは、両社が無線事業とコンシューマー向け携帯電話事業で培ったノウハウに基づき、ローカル用途に絞った形式で構成し、コアネットワーク装置と基地局の組み合わせで従来と比較して5分の1以下の価格で提供できる見込みだ。システムは、2022年4月にリリース予定で、5Gの中でも3.6〜6GHz未満の周波数帯を対象にした「Sub6」とデータ伝送と通信制御が行える「Stand Alone(SA)タイプ」をラインアップする。なお、当面ローカル5Gで使えるミリ波には対応しないという。
両社は現在、ローカル5Gシステム用SAシステムの実験試験局免許を取得し、同保有する神奈川県横浜市の研究施設で実証試験を行っている。試験では、ローカル5Gの環境に設置したロボットアームをカメラで撮影し、その映像を遠隔地から対象者が確認し、ロボットアームを操作できるかを検証している。
野口氏は、「現場マルチネットワークサービスは、ローカル5GシステムやプライベートLTEシステムに加え、Wi-Fiも備えているため、さまざまな顧客のニーズに合わせて、通信環境も構築できる。Wi-Fiに関しては、高速通信が可能な無線LAN規格“IEEE802.11ac用アクセスポイント”を用意することに加え、2021年10月には、最新のWi-Fi規格“Wi-Fi6”に対応したアクセスポイントを発売する」と語った。
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