インタビュー
» 2021年02月08日 07時00分 公開

積水ハウスが目指す「急性疾患の発症者を自動で感知し通報する家」、鍵は人体の異常を判断するアルゴリズム産業動向(1/2 ページ)

積水ハウスは、高齢化の波を受け、住まいで脳卒中と心筋梗塞により急死する人が増えていることなどを踏まえ、住宅で急性疾患を発症した人の早期発見と救急通報を実現するシステム「HED-Net」の開発を進めている。このほど、実際に住人が住む30棟の新築戸建て住宅で、HED-Netの性能を検証するパイロットプロジェクトがスタートした。

[遠藤和宏,BUILT]

 積水ハウスは、急性疾患早期対応ネットワーク「HED-Net」の効果を現場で検証するパイロットプロジェクトを2020年12月に始動した。

 HED-Netは、同社が現在開発を進めるネットワークで、2019年に発表した「プラットフォームハウス構想」の第1弾プロジェクト。プラットフォームハウス構想では、“「わが家」を世界一 幸せな場所にする”をコンセプトに、「人生100年時代の幸せをアシストする家」の実現を目指し、「健康」「つながり」「学び」の3項目に関連する取り組みを展開している。

 HED-Netのワークフローは、まず天井に設置したセンサーで、住宅に住む人の心拍数と呼吸数を非接触で検知・解析し、急性疾患発症の可能性がある異常を検知した場合には緊急通報センターに通知する。その後、オペレーターが、室内の通信機器で急性疾患の発症者に呼びかけを行い安否を確認し、救急隊に出動を要請して、救急隊の到着を確かめながら、玄関ドアを遠隔解錠する。

 今回のパイロットプロジェクトでは、約1年間を通して、寝室とリビングダイニングに配置した生体センサーで、住民の呼吸数と心拍数をセンシングし、検知解析・通信用の機器で取得したデータを分析して、センサーの性能や有効な生体情報の感知方法などを検証する。同時に、スマートホーム機能の体験と検証も行う。プロジェクトに参加する住人は、アンケート調査やシステム稼働状況の検証、データ収集などで協力。テストモニターは、積水ハウスが開発した新築戸建て住宅で、2020年12月以降に竣工した物件のうち、首都圏の合計30棟が対象となっている。

 パイロットプロジェクトの全容やHED-Netの開発経緯、今後のロードマップについて、積水ハウス 技術本部 副本部長 石井正義氏に聞いた。

家での死亡者数は年間約7万人

――HED-Netの開発経緯とは?

石井氏 HED-Netの開発に踏み切ったのは、高齢化社会が進む中で、住宅で脳卒中や心筋梗塞といった急性疾患を発症し、亡くなる人が増加傾向にあるためだ。滋賀医科大学や厚生労働省などが公表したデータによれば、脳卒中の年間発症者数は年間約29万人で、うち79%が家の中で発症している。脳卒中は、早期治療が重要な疾患で、発症から4時間30分以内の患者を対象とした治療薬「t-PA」を用いれば、命を救えるケースもある。

積水ハウス 執行役員 技術本部 副本部長 石井正義氏 撮影:村田卓也
急性疾患早期対応ネットワーク「HED-Net」 提供:積水ハウス

 しかし、家での発見の遅れが原因で、年間約1万5000人が住宅内で死亡しており、心疾患や溺死(できし)、転倒・転落による死者を加えると家での死亡者数は年間約7万人にも達する。脳卒中や心疾患、溺死、転倒・転落などによる死亡者の社会コストは、医療費や介護費、本人と家族の労働損失額、企業の生産性低下を含めると、8兆4000億円〜8兆7000億円と推計されている。HED-Netをはじめとしたプラットフォームハウス構想を実現した場合、9000億円〜1兆9000億円の社会コスト削減が期待できる。

 他業界の事例だが、自動車業界では、エアーバッグとABS(Anti-lock Braking System)が開発され、普及したことで、交通事故の死亡者数がピーク時の半分以下となった。積水ハウスには、HED-Netで、エアーバッグとABSのように、住宅で急性疾患の発症により死亡する人を激減させたいとの思いがある。

脳卒中や心疾患、溺死、転倒・転落などによる死亡者の社会コストとプラットフォームハウス構想の効果 提供:積水ハウス
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