第5回 住宅・ビル・施設 Week 特集

アズビルが提案する“with/afterコロナ時代”のオフィスと社会を支えるIoTビル設備群第5回 住宅・ビル・施設 Week(2/3 ページ)

» 2020年12月09日 10時14分 公開
[石原忍BUILT]

人の密度をヒートマップで可視化、オフィスワークの生産性向上に

 ビル内の3密を防ぐ観点では、MY CITYのビーコンとスマートフォンを用いた位置検知やAI画像解析を、アズビルの空調制御技術とリンクさせたソリューションが有効とPRした。

 このソリューションでは、スマホ上のマップで社員の位置を確認することで、密集するのを避けられ、人の多さに応じた空調の操作もタップするだけでできる。

 AIの画像解析では、クラウドに日々蓄積されていくデータを基に、エリアや時間帯別に人の密度をヒートマップで可視化し、不特定多数の集まるパブリックスペースやトイレの混雑状況が事前に分かるようになる。スマホで空いている会議室やワークプレイスを確認して有効活用すれば、オフィスワークの生産性向上にもつなげられる。

ヒートマップと、スマホに表示した空調の稼働状況

 オフィス空調機器のエリアでは、空気感染リスクを減らす目的で改良された圧力独立性機構を備える高性能の「風量制御バルブ」を展示。もともとは研究施設で、実験時に薬品の飛散を風量調整によって低減する機器として開発されたものだという。

 現在は医療機関を対象に、パンデミック発生時には、感染症対応の病床へスムーズに切り替えて、汚染管理区域と高度清潔区域でそれぞれが必要とする室圧環境を維持し、院内感染リスクを抑える空調機器として導入を進めている。

 風量制御バルブの仕組みは、天井裏の空調吹き出し口の奥に取り付け、ボタン一つでバルブを開閉することで、給気・排気の風量が切り替えられる。オフィスビル向けでは、バルブを改良し、AI顔認証・温度検知ソリューションと組み合わせた活用方法が想定されている。例えば入場ゲートで感染者が検知されると、1秒以内に制御バルブが即応して、オフィスエリアからエントランスへ流れる風量を増やし、オフィスへウイルスが侵入するのを妨げる。急な密が生じそうな場合でも、給気・排気風量を開放して空気の流れを循環させることで、感染リスクを低減。逆に人のいないスペースでは、風量を絞ることで省エネにも貢献する。

「風量制御バルブ」。展示品は研究施設向けに茶色医薬品コーティングが施されているが、オフィス用途ではアルミ剥き出しの外観になる予定

 開発中の参考出品では、「人に寄り添って、それぞれ空調」を謳う、吹き出し口ごとに自動調整する新たな風量制御方式を2020年3月下旬のリリースに先駆けて披露した。新方式では、これまで1つの部屋で、個人の暑い寒いに関わらず、同一の空調設定を受け入れなければならなかった問題点を解消。天井の各吹き出し口で空調設定を自動化し、個人のスマホでも好みの風量に変えられるため、個人それぞれに適切な空調制御が可能となる。

 システム構成は、ディフューザー(吹き出し口)を制御するコントローラー及びBLE送受信機を備えたダンパボックス「SDF(スマート型ディフューザー用制御ダンパ)」、複数のダンパを通信規格“BACnet”で一元的につなぎ統合コントロールする「DDCnf(空調コントローラー)」、手のひらサイズで壁面や机の隅などに配置する「WPセンサー」、空調設定を行う専用スマホアプリ。

風量制御方式の概要

 空調制御の仕組みとしては、WPセンサーで温度、湿度、照度を計測して、BLE通信を介し、受信機を搭載している天井裏のSDFに送信。机ごとや狭いスポットごとに、その時々で最適な風量制御をSDFが行う。最小範囲は、サブロク板の天井パネルに換算して、およそ13平方メートルの空調に応じ、スマホアプリでも個別の温度設定が操作できるため、在席者個々の快適さに合わせた心地よい空間が維持される。オフィスレイアウトの変更時にも、配線工事が要らず、空調を制御するゾーンを変えるだけで済むという利点もある。

BLE送受信機を備えたディフューザーのダンパボックス
手のひらサイズのWPセンサー

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