モデレーターの鈴木真二氏は、JUIDA 理事長の立場から、JUIDAが実施した事業の概要を説明。JUIDAには、5つの調査事業があり、このうち福島RTFのテスト用プラントを使い、ドローンを使った点検に関する事業を実施している。また、国際イベントなどの催しに関する事業として、ドローンを利用した空撮やイベント中に心臓発作などが発生した場合には、速やかにAEDを届けるための運用方法も検討した。
実施した事業については、検討、実証実験を経て、成果物として文書化され、「実務マニュアル」「チェックリスト」「教育カリキュラム」にまとめられている。
プラント点検では、老朽化とともに点検を行う人員の不足が懸念されている。鈴木氏は、「効率よく点検ができるように、ドローンを活用しようとする動きが活発になっている」と話す。
ドローンを使ったプラント点検は、球形ドローンで屋内や狭い場所での作業も想定されている。ドローンによる点検では、ボルトの緩みやクラックの有無などの確認の以外にも、メーターの数値も読み取れるため、現場の省人化・省力化が期待される。
次のドローン点検の段階として鈴木氏は、JUIDAで技能証明書を制度化すべく、計画を進めていることを明かした。
イベント関連では、ボートやヨットなどの動いているものを上空から撮影する際のガイドラインを作成。空撮に関しては、画角内に対象物が収まるように撮影するための訓練法を提示している。
JUTM 事務局次長の中村裕子氏は、ドローン運用の課題として存在する「パブリックセーフティ」を論じた。
ドローンは現在、将来的に幅広い分野への活用が期待されている。例えば、国際的なスポーツイベントや先に紹介した点検業務などへの導入だ。しかし、その運用方法が適切でないと、イベント参加者や地域住人の脅威にもなりかねない。中村氏は、2018年にイギリスで不審なドローンの通報のため、ロンドンのガトウィック空港が3日間閉鎖されたことを引用し、飛行しているドローン管理の必要性を訴えた。
安全なドローン運用に関しては、社会全体でドローンを管理するリモートIDや運行管理システムの開発が国内外で進んでいる。しかし、それらはすぐに実装できるような簡単なものではない。そこで、JUTMは福島RTFで短期間で実現できる管理体制を検討することにした。
現時点では、イベント会場付近などでドローンを見つけた場合、とにかく警察に通報するしかない状況にある。しかし、JUTMではこの意思決定のフローを細分化し、そのドローンがイベント関係者のものか否かや計画通りの飛行なのかどうかなどを即座に確認できる仕組みを考えてきた。
パブリックセーフティを策定するためには、専門家や幅広い関係者との議論を重ねてきた。中村氏は、「社会実装の仕組みを作っていく上で、重要な成果が得られた」とし、実証実験や議論の中で、これまで見えていなかった課題が出てきたり、意外な活用法が見えてきたと語る。最終的にパブリックセーフティの取り組みは、ガイドラインのマニュアルとして結実し、福島RTFのWebサイトで公開している。
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