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ドローンの安全・効率的な飛行に不可欠な“UTM”とは何か?米国UAV動向から分析Japan Drone2020(2/3 ページ)

» 2020年11月02日 06時38分 公開
[川本鉄馬BUILT]

UTMのトレンドは「分散型」

 リモートIDそのものには、Broadcast型とNetwork型の2つがある。Broadcast型は、機体がWi-FiやBluetoothを使って直接IDを送信する。一方のNetwork型は、機体がインターネット上に位置情報を書き込み、情報を知りたい人がそれを検索する形をとる。中台氏は、アメリカで基本とされトレンドとなっているのは、Networkによる分散型とした。

リモートIDの2つの実現方式

 Network型のメリットと中台氏が挙げるのが、実証実験での安定性と航空当局がデータを把握できる点。Broadcast型にはインターネットが使えない地域でも使えるが、どこにも情報が残らない。これに対してNetwork型は、インターネット上に情報が残る。

 そもそもUTMは、2013年に通称「PK」と呼ばれるNASAのDr.Parimal Kopardekarが提唱したものが始まりとされる。中台氏は、当時のUTMは、集中管理的な要素で設計されていたし、「これが徐々に分館型のシステムへと形を変え、USS同士が連携するなどして現在の分散型にシフトした」。

 中台氏は、UTMの大きな特徴を「意思決定主体の分散」と位置付けている。意思決定主体の分散により、各USS事業者は他社と差別化した独自のサービスを提供できる。仮に集中型であれば、官側の判断を仰ぐ必要が生じ、効率や自由度が落ちてしまう。

 また、官側にとっても、意思決定主体が事業者にあれば、個社ごとに飛行計画に対して責任を待たせられ、システムの開発コストを負担せずに済むなどの利点がある。

 さらに中台氏は、今後は動的でダイナミックな情報を管理しなければならないため集中型ではシステム的に難しいと指摘し、動的な情報が分散でき処理能力のスケールも可能な分散型の方が良いとされている理由を説明した。

UTM標準化の最前線とASTM

 分散型のUTMに関して、民間非営利の国際標準化・規格設定機関「ASTMインターナショナル」がUTMに関するフォーラム標準として検討しているのが、官側による間接的な監査だ。ASTMインターナショナルは、かつては米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials)というマテリアル関連の団体だった。

 システム案では、まず官側がUSSに対して守るべき指針やルールを示す。これに対して各USSは、それぞれ独自に飛行計画を作り、多様な状況に対する判断の後に運用を行う。その後、順守率を官側に報告するというフロー。

 ここで官側が行う監査の目的は、安全性や公平性の確保となる。現段階では、余裕を持った適切な飛行空間を維持しているか、逆に空間を独り占めする申告がなされていないかなどをチェックする方向性で、議論が交わされているという。

 現在、UTMは全てのUASを統合するまでには至っていない。しかし、各USSがASTM標準でつながれば、多くの無人航空機の情報がUTMで管理できることになる。中台氏は、1980年代後半から1990年代後半に盛んだった各プロバイダーが独自に運用していた「パソコン通信」がインターネットに発展するイメージになぞらえて、この統合の可能性を説明した。

分散型モデルでのドローン産業発展のイメージ

 中台氏は、統合的なUTMを可能にするキーワードとして「DSS」と「Negotiation」を挙げる。DSSは、Discovery and Sync Serviceの略で、インターネットにおけるDNSのように各USS間で通信を行いリモートIDを実現する。DSSは、UTMの統合に重要な部分だが、以前はGoogle(Wing)とAmazonで実現方式が異なっていた。現在は、ASTMインターナショナルによって、「DSS」として共通化・標準化されている。

共通化されたDSS

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