COVID-19下の不動産投資戦略、CBREが独自アンケートから分析不動産市況(1/2 ページ)

CBREは、独自アンケートに基づく、不動産投資市場の現状を俯瞰し、今後の戦略について考察したレポート「COVID-19下の不動産投資戦略」を公表した。

» 2020年10月05日 06時04分 公開
[BUILT]

 CBREは2020年9月15日、「COVID-19下の不動産投資戦略」を発表した。レポートでは、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が不動産投資市場に及ぼした影響について、CBREが2020年の3月(3月10〜31日)と6月(6月9〜30日)の2回にわたって実施した投資家に対するアンケート結果から読み解き、COVID-19下にある不動産投資市場の現状や今後の不動産投資戦略について考察している。

6月に入り投資意欲は改善

 レポートによれば、新型コロナウイルスが拡大した2020年3月以降、売買市場では延期もしくはキャンセルされる取引が増加したが、5月25日に緊急事態宣言が全国で解除され、6月からは投資活動も徐々に再開されたという。

 CBREが6月に実施した投資家調査の結果も、3月調査に比べ、投資家の意欲が改善する傾向を示している。投資対象については、キャッシュフローの安定性を重視し、景気変動の影響を受けにくいアセットタイプを選好する傾向に変化は起きていない。

 緊急事態宣言下にあって、COVID-19による不動産取引への影響は拡大した。2020年第2四半期(4〜6月期)の事業用不動産の投資額※1は、対前年同期比22%減の7530億円となった。J-REIT及び他の国内投資家による投資額がいずれも前年同期を大きく下回った。

※1 10億円以上が対象で、土地取引とJ-REITのIPO時の取得物件は除く

 また、6月調査では、「感染拡大は取引に影響があった」と回答した投資家は、全体の53%で、3月の調査結果に比べて、12ポイント増加。そのうち「取引が中止・延期になった」と回答した投資家は37%と、同14ポイントの増加。緊急事態宣言中は外出自粛要請により、取引が進められない状況にあったため、4〜5月に中止や延期などに至った取引が増加したと考えられると指摘している。

Figure1:COVID-19感染拡大による取引に対する影響(回答率) 出典:CBRE

 しかし、6月に入り投資意欲は改善し、投資家は活動を再開した。5月25日に緊急事態宣言は解除され、経済活動は徐々に再開されてきている。6月に行ったアンケート調査で、不動産投資戦略に対する影響を尋ねたところ、感染拡大前に比べて「投資方針は変わらない」と回答した投資家は全体の75%を占め、3月の調査結果に比べて13ポイント増加した。

 一方、「取得額を減額」「分からない」を選択した回答者の割合は、いずれも前回調査結果に比べて減少した。

Figure2:COVID-19感染拡大による投資方針に対する影響(回答率) 出典:CBRE

 売買市場では、売り手と買い手で価格目線の乖離(かいり)は従前以上に広がっている。売り手と買い手の価格目線での乖離が続く理由の一つは、価格を下げてまで売り急ぐ売主が少ないことがある。そのため成約件数は当面、低迷することが想定される。金融危機当時に比べてディストレス案件は少なく、価格を下げてでも売ろうという売り手も多くないため、収益不動産の募集価格も総じて、高止まりの状況が続くとしている。

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