設立当初は、ShopBotで合板の加工をメインにしていたが、ある時期からユーザーの声を聞くに従い、“木”そのものへと目を向けるようになった。現在では、ShopBotは国内で工務店や製材所、ホームセンターなどで51台が稼働している。最初に購入された製材所では、「このまま材木を切り売りしているだけでは、儲(もう)からず先行き不透明なため、材料加工をShopBotで内製化して、成形品を販売することが新たなビジネスチャンスに成るのではないか」と目に留まり、周囲の木材事業者もこの考えに賛同し、順次導入されていった。
「国産材を取り巻くサプライチェーンの上流に行けば行くほど、中間コストは要らなくなる。そのため、上流で物事が完結すれば、限りなく低コストで家や家具の提供が可能になり、流通でも環境負荷をそれほど与えずに済むことも共感が得られた理由の一つ」。
例えば、樹脂だと地球上にある有限な化石燃料を使うが、これが木に置き換われば、「“素材を自分で育てられる”。言うならば、自ら材料を生み出せば、ゼロ円でモノづくりが実現する。さらに木材はパーツにして簡単に組めるので、地域の子供たちが木に触れる木育の観点でも有効だ」。
こうした木の利点から、最近では自治体の依頼も増えているという。岡山県の「地域課題解決プロジェクト」補助事業に認定された県西北端の山あいにある新庄村での実験工房プロジェクトでは、ShopBotをコンテナに積んで現地に運び、新庄村産の木材を使って家具づくりを行った。
2019年には、南破市利賀村で、“現代版の合掌造り”ともいえる木造建築「まれびとの家」を具現化させた。背景には、村域のおよそ98%を占める森林の活性化と限界集落のため、村外から人に来てもらいという地元の思いがあった。
利賀村の合掌造りでは設計段階で、昔は大黒柱などで価値が高かったが今の流通では細く加工されてしまう、売り先が無く余っていた太い地元材を利用することとした。使い道を検討する上で、ShopBotは横幅のあるものが得意なため、太さはそのままにして製材所で平らに切り出し、10本の樹を切って梁(はり)などに余すところなく使い尽くす、デジタルファブリケーションならではの有効活用を示した。
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