インタビュー
» 2020年09月15日 05時15分 公開

ニューノーマルを生きる建築のRe-build(1):「デジファブで建築の民主化を」VUILD・秋吉代表が拓く建築ファブの夜明け【前編】 (2/4)

[石原忍,BUILT]

 その点ShopBotは、誰にでも門戸が広く開かれているため、全世界で1万台以上が動いているほどに海外にファンが多く、ユーザーコミュニティーも形成されていた。「DIYカルチャーが根付いている米国では、個人がガレージに置いて1家に1台という風に、欧州では、街の中に工房で使われているケースが多く、まさにパーソナル・ファブリケーションのコアツールとして社会に浸透している」。秋吉氏は、大学院を卒業後には、ShopBotの販売代理店と、ShopBotを採り入れた建築設計の業務を2015年に個人で始めた。

建築デジファブの要(かなめ)とVUILDが見なす「ShopBot」 提供:VUILD

 VUILDの前身となる会社では、神奈川県川崎市の木育プロジェクトに参画。市では、地球温暖化の防止や森林再生に寄与する国産材の利用を促しており、その一環として“木育”をテーマに、未来を担う子供たちへ木の魅力を伝え、街や地域コミュニティーの活性化を図る「川崎市ティンバーリノベーション事業」を展開している。

 この一環で、2017年2月には国産材で街中に遊び場を創出するイベント「まちもくパーク」で、木製の遊具やベンチなどの企画・製作を担った。まちもくパーク開催前の市民向けの事前ワークショップでは、設計から、製造、加工、施工までを地域住民と一緒になって手掛け、会場となった市内の上並木公園には、長さ12メートルにも及ぶ仮設橋をはじめ、遊具やベンチなどを展示した。

現在はVUILD本社に移築した仮設橋のモニュメント

VUILD起業を後押ししたのは、ガンホー創始者の孫泰蔵氏

起業の意志は早い段階からあったと語る秋吉氏

 同年の2017年には、VUILDの起業に至るが、直接の要因となったのは、2017年3月29〜30日に東京ビッグサイトで初開催した国際的なスタートアップカンファレンス「Slush Tokyo」(現・BARKATION)のメインステージ制作を任されたこと。

 Slushは本来、北欧フィンランド発の若手起業家とインベスターをマッチングさせる世界最大規模のイベントだったが、ソフトバンク 孫正義社長の実弟で、ガンホー・オンライン・エンターテイメント創業者としても知られるVUILD出資者の孫泰蔵氏がSlushの日本版として日本に持ち込んだ。「孫氏とは、大学院時代から交流があり、Slush Tokyoを機に久しぶりにお会いして、プロジェクトを数件任されて、抱いていた起業したい意志を後押ししてもらった」。

 会社設立にあたり、それまで市民参加型のワークショップでは、CADの使い方から教えていたが、「誰でもつかいこなせるためには、機械だけがあってもダメで、難しい操作が無いインタフェースが不可決だと再認識した。同時に、ShopBotの普及も同時にしていていかなかればならず、実績となる建築物を具現化できる事業のスケール化(規模拡大)も見据えた」と振り返る。

 そのため、事業化にあたり、ハードウェア(ShopBot)を販売する「ShopBot Japan」、建築事務所としての顔を持つ「VUILD ARCHITECTS」、ソフトウェア開発の「EMARF(エマーフ)」の3つを柱とした。

京王「笹塚」駅のワークショップでは、地域住民がShopBotで加工されたベンチを組み立てた 提供:VUILD

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