西松建設は、高層RC造建物に使う中柱接合部をプレキャスト化する新構法を開発した。今後、施工合理化と工期短縮を目的に、高さ60メートルを超えるRC造施設の設計・施工に適用していく。
西松建設は、静岡理工科大学 建築学科 教授 丸田誠氏の指導に基づき、高層RC造建物の柱梁(ちゅうりょう)接合部のプレキャスト化率を向上できる「アジャストビーム構法」を開発した。
RC造の柱梁接合部は、多くの鉄筋が交差する部分であるため、プレキャスト化による合理化と省力化工法が業界で期待されていた。通常プレキャスト部材の接続に用いられる機械式継手のA級継手は、認定上の制約から、降伏ヒンジ領域を避けた位置に設ける必要がある。
降伏ヒンジ領域は、従来梁(はり)では、降伏ヒンジ位置の柱面から1D(D:梁せい)までの区間(図1)で、A級継手を降伏ヒンジ領域と異なる部分に設置すると、中柱接合部のプレキャスト部材長さが、運搬車両で積み込める2.4メートルを超えてしまうため、プレキャスト化が困難だった。
そこで、中柱接合部のプレキャスト部材長さを運搬車両に積み込める長さにしたのがアジャストビーム構法。
アジャストビーム構法(図2)は、ヒンジリロケーション技術を活用して、梁端部から接合部内の主筋(梁端補強部主筋)を梁一般部主筋より太径・高強度化することで、降伏ヒンジ位置を継手の先端に置くことができる。結果として、機械式継手を柱面寄りに装着でき、運搬車両に積載可能なプレキャスト接合部が実現する。
また、機械式継手を柱面から0.1D〜0.3Dの範囲(図2)で取り付けられるため、機械式継手の位置を変化させて、梁の曲げ強度を調整可能で、設計の自由度が高い。例えば、機械式継手の位置を柱面から離すことで、梁の曲げ強度を高められるため、梁一般部主筋を削減し、長期利用に対応させられる。
ヒンジリロケーション技術を用いて、降伏ヒンジ位置を柱面から遠ざけることで、接合部の形状が大きくなるため、接合部内主筋の付着改善や柱梁接合部の曲げ降伏防止といった効果も望める。
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