大林組は北陸鋼産と共同で、山岳トンネルの覆工において、ホースを用いることで打ち込み時のコンクリートの落下高を最小限にできる「ホース伸縮式連続打設システム」を開発した。
大林組は2020年5月、北陸鋼産と共同で「ホース伸縮式連続打設システム」を開発したと発表した。本システムが実用化すれば、山岳トンネルの覆工における掘削作業の安全性および覆工の品質向上を図り、一連の作業工程を省力化するシステム「OTISM/LINING(オーティズム/ライニング)」が完成に近づく。
ホース伸縮式連続打設システムは、覆工コンクリートの打設時に、左右1列に配置したホースをコンクリートの打ち上がりの高さに合わせて自動で引き上げることで、鋼製配管の切り替え作業をせずに連続して打設ができるシステム。
従来の覆工コンクリート打設作業では、限られた打設口からコンクリートを流し込む山岳トンネル特有の打設方法を採っていたため、筒先からの落下高が大きくなることがあり、コンクリートの材料分離や余剰空気を巻き込むリスクがあった。
また打ち上がりの高さに合わせて、狭あいな施工空間で作業員が都度切り替えて打設していたため、配管の切り替え作業や清掃作業に時間と労力がかかっていた。
本システムの開発により、最小限の落下高での打ち込みが可能となる結果、材料分離や余剰空気の巻き込みを防ぎ、配管切り替えによる打ち重ね時間の超過や苦渋作業も解消されるという。
大林組は、山岳トンネルの施工における生産性を飛躍的に向上させる山岳トンネル統合システム「OTISM(Obayashi Tunnel Integrated System)」の開発に取り組んできた。
同システムのうち、覆工(LINING)に係る品質向上・省力化を実現するシステムが「OTISM/LINING(オーティズム/ライニング)」だ。
「OTISM/LINING」では、覆工作業を防水シート張り付け、セントルセット(移動式型枠の設置)、コンクリート、打設、養生の5つの分野に分け、各分野で品質向上や省力化に資する技術を統合する。
5分野のうち、コンクリートでは「ニューロクリートNeo」、養生では「モイストキュア」が実用化済みであるほか、防水シート張り付けとセントルセットについても開発が進んでいる。
今回開発したホース伸縮式連続打設システムが実用化されれば「OTISM/LINING」はほぼ完成し、現在6〜9人必要とする覆工作業に要する人員が、2〜3人にまで省人化できるとしている。
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