他社に先駆け2020年の4月から“施工BIM”に取り組んできた大和ハウス工業でも、施工領域での全社展開は、スムーズには進まなかった。その原因を思案するうち、多くの方が頭の中に思い描く、「施工BIMの本質」が間違っていたのではないかという考えに行き着いたという。連載第5回では、前回に続き、同社技術本部 建設デジタル推進部 次長・伊藤久晴氏が施工BIMの課題を探り、その先にある施工BIMのあるべき姿を全社展開の具体的な手法を紹介しつつ指し示す。
前編で紹介したように、こうした経験を経て、2016年に社内稟議で施工BIMに対する補助金を確保し、本格的なBIMプロジェクトへと移行した。
このプロジェクトでは、設計の段階からRevitを使い、顧客との打ち合せなどに活用した。基礎躯体については、構造BIMモデルとのデータ連携で躯体施工図モデルを作成。そのおかげで、配管ピットのある基礎躯体であったが、手戻り作業は全く生じなかった。
現場でのBIMモデル活用を徹底させるために、現場の次席担当者に、RevitやNavisworksなどの操作研修を行った。この現場では、現場所長の理解もあり、多様な場面でBIMモデルを有効利用することが実現した。
広い敷地にある工場の一角で、事務所棟を作る仕事では、工事に割り当てられる敷地は狭かったため、下図のような施工ステップ図はとても役立った。
施工計画図は、下図のように朝礼看板で掲示したり、職長との打ち合わせや新規入場者教育などの場面で活用したりした。日々のミーティングなどで施工計画が変更されることをBIMモデルに反映するのは、手間がかかったが、そこに対応することで、日々の施工状態が見える化することができた。
とくに力を入れていたのは、統合BIMモデルによる納まりの確認だ。納まりの確認会議を「コーディネーションミーティング」と呼び、統合BIMモデルをAutodesk Navisworksのデータにして事前に関係者へ配布し、問題点を話し合うというものである。
発見した問題点は、「A調整」から「D調整」までの4つに分類し、コーディネーションミーティングで大きな問題と判断されるA調整と判定されたものは、次回のミーティングまでに対応するというルールを作った。
コーディネーションミーティングの前には、参加者が発見した問題点をビューポイントとして提出し、発見者自身が説明して、会議の中で解決策を検討する形を採った。
ここで活用したBIMモデルは、施工前のコーディネーションミーティングだけでなく、iPadに統合BIMモデルを入れ、施工の指示や納まりの確認も行った。
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