安藤ハザマは社寺や城郭などに使用されている錺(かざり)金具を3Dデータ化する技術を開発した。
安藤ハザマは2020年3月6日、パンチ工業と共同で、名古屋城本丸御殿の錺(かざり)金具(引手)の試作品をスキャニングし、3Dデータ化に成功したと公表した。
文化財や歴史的建造物の分野では、建物そのものや装飾造作物などをデジタルデータ化して保存しようとする動きがある。現状、社寺や城郭(じょうかく)に取り付けられている錺金具は、金属面に魚卵のような粒を密に打ち込んだ文様「魚々子(ななこ)」や「蹴鏨(けりたがね)」を用いた輪郭線や文様の彫刻「蹴り掘り」といった非常に微細な意匠を有しており、写真で細部まで確認するのは困難だった。
また、錺金具は、微細な意匠が求められるとともに、金銀の光沢や、金具を硫化カリウム溶液に漬けて、化学変化で銅部分を黒くする手法「煮黒味(にぐろみ)」が用いられていることも課題だった。レーザーやLED光を対象物に照射して形状を計測する3Dスキャナーでは、光を反射しない黒色や光沢のあるもの、透明なものは正確にスキャニングできず、微細な文様を再現することが難しいためだ。
今回、名古屋城本丸御殿で復元された襖(ふすま)引手金具の試作品は、スキャナーの機器選定や光量・撮影モードの調整および700種類以上の素材を使用したレンダリング(3Dデータに色や質感などの情報を付与)を行うことで、スキャニングによる光の反射で生じる問題を解決した。魚々子や蹴り彫り、毛髪のように細い線で描いた文様を施した彫刻「毛彫(けぼ)り」、彫金や切断時に用いる鋼製の道具「鏨(たがね)」の彫り跡といった彫金技術のデータ化にも成功。
さらに、上洛殿で実際に使われている錺金具を製作した後藤錺金具製作所の指導のもと、レンダリングの最終調整を実施し、金箔や煮黒味の色や質感、微細な彫金技術、顔料にケイ酸などを加えた釉薬ゆうやくを金具に塗り高温で焼き上げたもの「泥七宝」の色艶や気泡なども忠実に再現した。
今後、安藤ハザマは、技術伝承の補助や文化財アーカイブ、観光資源を再現したVRへの応用などに本技術を生かす方針を示している。
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