奥村組は2015年にBIM推進グループを立ち上げ、今年で5年目を迎える。グループでは、3Dプリンタを用いて作成した模型の活用やステークホルダーと独自に連携方法を構築して、BIMモデルの精度を高めている。直近では、トプコン製トータルステーション「LN-100(杭ナビ)」とオートデスク製クラウドBIMアプリ「BIM 360 Layout」を併用して、BIMを運用する「BIM測量」にも注力し、実施工での成果をあげている。
トプコンソキアポジショニングジャパンとオートデスクは2019年5月28日、東京・中央区のベルサール東京日本橋で、「墨出し・杭打ちBIM&クラウド連携セミナー」を開催した。
本稿では当日の講演の内、奥村組 管理本部 情報システム部 BIM推進室長兼BIM推進グループ長(大阪)の脇田明幸氏と同部 同推進室 BIM推進グループ(東京)の三井和章氏による「杭芯など位置確認作業と施工検討でのBIM活用事例」を取り上げる。
冒頭、脇田氏が登壇し、1000席規模の多目的ホールでのBIM活用事例を紹介した。この事例は、複雑なトラス構造となった建物の3階に設置された客席部分の鉄骨製作・納まり検討にBIMを使用した。
同社の建築工務部門、BIM推進室、設計部門に加え、鉄骨ファブリケーター、工事所、設計事務所と連携し、一貫したBIMの運用に挑んだ。
脇田氏は、「当時はBIM推進グループがスタートしたばかりで、BIMの使い方も分からないことだらけだった中、このトラス構造の客席の案件が浮上しました。実務でBIMモデルを使用するきっかけとなった案件でした」と語った。
BIMソフトには「Revit」を使用し、まず、2Dの構造図を元に、意匠設計者や構造設計者とともにBIMモデルを作製し、検討と打ち合わせを行ったという。一貫構造計算ソフトウェア「Super Build/SS3」からエクスポートしたデータを用いて、建物の全体モデルを作製し、3Dレビューソフト「Navisworks」で、モデルの確認を進めた。
脇田氏は、「関係者でこれらのBIMモデルを見ながら、不整合箇所や必要な対策について積極的に話し合いました。検討のポイントとなったのは3点。初めは、主軸となるトラス梁(はり)で、2Dの図面では直線的な形状でしたが、3Dモデルで見た場合、少し歪曲しており、上弦材の梁を曲げる必要性を確認できました。次に、構造計算書の守るべき寸法について議論し、鉄骨ファブリケーターなどに周知しました。続けて、主軸となるトラス梁は、上部のスラブ形状に応じたねじれを確認できました。これらの要素を踏まえて、BIMモデルを修正し、鉄骨一般図を作図するための基準としました」と説明。
続けて、「工事所、当社の施工支援部門、鉄骨ファブの担当者や設計事務所の監理者などと共に、BIMモデルと鉄骨一般図の細部を考察し、細かい箇所の精度を向上させました。例えば、原設計では下向きに鉄骨を丸柱に取り付けることになっていましたが、芯ずれなどもあり、上向きに取り付けたほうが、納まりが良いことが分かり、仕様変更を行いました。溶接方法や使用する変形BH(ビルドエイチ)鋼の形状、仕口の納まりについてもディスカッションを重ねました。溶接方法は、工場の専門部門の方にも協議に参加してもらい、BIMモデル通りに、実際に溶接できるかを確かめました」と付け加えた。
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