具体的なサービス内容は、オカムラ マーケティング本部 DX推進室長 遅野井宏氏が開発のロードマップを示した。まず3社の立ち位置として、オカムラはIoT搭載家具の生産と販売に加え、オフィスIoTビジネスを確立し、商用化させる。日本マイクロソフトは、Microsoft Azureのクラウド環境を提供する他、技術やマーケティングの協力、サトーは次世代RFIDタグを含む、センサーソリューションの生産と供給をそれぞれ担う。
遅野井氏は、現状でのオフィスの問題点として、「(家具が)納品された後のオフィスは、管理部門が利用状況を把握できていない。稼働実態が分からないため、オカムラの営業担当者にとっても、顧客からの要望を待つだけの受け身で手探りの提案になってしまっている。経営層も、働き手のために、そこに戦略的な投資をしようという意識にはなりにくい。働く側でも、自分自身が働くオフィスに対して、主体的に考える習慣が無いので、働き方の改善にはなかなか成り難い」と、オフィスの運用状況が不可視な状態にある弊害を指摘した。
そこで発想したのが、オフィスにある家具や空間をセンシングする“オフィスのデジタルツイン”。手法としては、センサーを取り付けたイスやテーブルで、ワーカーの位置や使用ログ(理着席/昇降デスクの操作など)、環境データ(温湿度、CO2濃度、照度、騒音など)を取得し、Microsoft Azure上に構築するオフィスIoTプラットフォームに集約。集まったデータは、Azure Machine Learningで解析し、家具や部屋の稼働率や占有率、フリーアドレスの拡散率、ヒートマップといった統計データをMicrosoft Office 365で表示する。
オフィスの運用データが可視化されることで、管理部門が効果的なファシリティマネジメントを立案するのに役立ち、デッドスペースの有効活用や会議室予約の調整、ニーズの高い家具への交換など、ビジネスの成長に合わせたワークプレースの変化に、持続的に対応できる環境が実現する。
また、経営陣にとっては投資判断が下せる材料にもなり、社員は働いた場所のログが残るため、仕事内容に応じて、働く場所を選択できるようにもなる。例えば、午後から資料作成があり、集中したいときには、パーテーションで囲われたデスクをオフィス(AI)側から提案するといったことも想定される。
メーカーとしてのメリットでは、今までのクライアントから要望を聞くだけの受け身ではなく、日々蓄積されていくデータを用いて、別のオフィスや他社の利用状況を比較して示すなど、より主体的な課題解決の提案が可能になる。
マイクロソフトとの提携理由を遅野井氏は、「Azureが世界的にみても、セキュアな環境を構築できることと、Office 365とデータ連携できる利点で選んだ。Office 365の活用では、日常業務のメールや会議室の予約機能などともプラットフォーム上でリンクさせていきたい。また、家具に組み込むサトー製センサーは、製造コストや移動する際の電源などを考慮して、内蔵するタイプと外付けユニットの両方を検討している。家具にセンサーを取り付けることで、製造工程でもトレーサビリティに使える2次的なメリットも見込んでいる」と話す。
オフィスIoT構想の開発ロードマップは、2020年度内に、現在進行形で業種の垣根を越えた複数のメーカーによるIoT製品/サービスの検証を行っている東京・丸の内のコワーキングスペース「point 0 marunouchi」で、実証実験に着手する。その後、2021年をめどにサービスをローンチさせ、対応製品を順次広げ、2025年ごろには全ての新製品をIoT化させる。
その先のビジョンでは、オカムラの得意とするデスク、チェア、セキュリティ、収納など以外にも、ビルシステム、照明や空調、複合機などの設備/事務機器、ヘルスケア、HRソリューション(人事関係)などと、業界と領域を超えたAPI連携も視野に入れている。
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