今後のビルシステムは、利便性を追求するなかで、ますます情報システムに近づいていくと考えられる。ということは、情報システムで起こっている脅威が、ビルシステムでも発生し得るということである。
例えば、表1のホテルのカードキーシステムに感染したランサムウェアは、もともとはインターネットに接続された情報システムのWindows PCを対象としており、PCに感染して、データを暗号化し使用できなくした上で、解除するための鍵情報と引き換えに暗号資産などでの支払いを要求するマルウェアである。
だが、このビルの制御システム(カードキーシステム)がインターネットに接続しており、かつシステムがWindowsで構成されていたことで、多額の金銭被害にあってしまった。
従って、このようなケースは今後も増えると考えられる。また、Connected Industriesの実現に向けて、業界間のシステムの接続が進むことを考えれば、ビルシステムが攻撃を受けるリスクが高まると同時に、ビルシステムが他業界のシステムに対するサイバー攻撃の踏み台になるリスクも高まる。つまり、被害者どころか、加害者の一翼を担う事態になりかねないのだ。
以上、第3回は、本ガイドラインの2章を中心に、ビルシステムの環境変化とリスクについて紹介した。
■ビルシステムを巡る環境変化は、どういうリスクにつながるのか?(2章のまとめ)
⇒ ビルの使用者に対する人的な被害(プライバシー侵害も含む)が発生し、訴訟なども含めて、ビルオーナーやビルシステム関係者の責任が問われる可能性がある。
■今後、ビルシステムに対して、どのようなリスクが考えられるのか?
⇒ ビルシステムが、情報システム化するにつれ、ランサムウェア攻撃などにより、多額の金銭被害にあう可能性が高まる。また、業界間のシステム間の接続が進むにつれて、サイバー攻撃の被害者となるだけでなく、知らないうち間接的に加害者となることも起き得る。
このようなビルシステムの環境変化とリスクから、ビルシステムに対するセキュリティ対策の必要性が理解できたのではないだろうか。では、具体的にどのように進めればよいのか。次回は、本ガイドラインの3章である「ビルシステムにおけるサイバーセキュリティ対策の考え方」を整理して、紹介する。
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