取得した画像は、キヤノンのコア技術「イメージングテクノロジー(映像技術)」を応用し、斜めから撮影した画像を正対化する「あおり補正処理」や複数方向から撮影した画像を合成することで手前の遮蔽(しゃへい)物を除去する「遮蔽物除去処理」を行う。
適正な処理を施した画像は、AIで対象物のひび割れを検出する。板橋氏と穴吹氏は、「以前は、目地、チョーク、汚れなどを誤検知していたが、極力太いほうのひびを検出するようにして、チューニングしたことで精度が向上した。今では、国交省のレギュレーションで求められている0.05ミリにも耐えうる性能を有する」。
また、AIサービスは、「しきい値を変えるなど、ユーザーの要望に応じた形で、または1年の点検スケジュールの中で、最適化させて提供することも可能だ。クラウド化していないのも、それではユーザーにオペレーションの手間を取らせることになり、AIの調整も効かなくなるためだ」と説明。
点検結果のデータは、CADデータ(DXF形式)に変換することで、鉄道事業者や道路事業者にも採用されている東設土木コンサルタントが開発した変状調査支援CADソフトウェア「CrackDraw21」に対応する。CrackDraw21上では、図面>画像>変状とそれぞれのレイヤーがブック形式で重なり、何回も点検データを蓄積していけば経年変化が可視化される。構造物の変状を展開図や3Dで表示できる他に、点検調書のExcel出力も可能になる。
撮影と画像処理、AIの変状検知の3つのサービスは、必ずしもトータルで提供するというわけではなく、ユーザー自身が撮影したデータを使用したい場合など、ケースバイケースで、どの段階からの利用にも応じる。
実証では、2018年11月に、国交省の道路橋点検記録作成支援ロボット技術を対象にした技術公募に参加してテストした。現場では、目視点検で605本のひびを見つけたのに対し、キヤノンの技術では601本を発見して検出率99%だったという。
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