「冷房・暖房を持ち歩く」の発想から生まれたクラレの新型ジャケットウェアラブルIoT

» 2019年09月10日 05時18分 公開
[石原忍BUILT]

 クラレは、ウェアラブルセンサーを研究しているWINヒューマン・レコーダー(WIN HR)と共同で、「電子制御冷暖房装置」を搭載したジャケットを開発した。新型ジャケットは、着用者の身体を効率的に冷やしたり暖めたりする。市場での展開は、極暑対策ウェアや屋外作業衣、老人介護衣、救助隊作業衣などの用途を見込み、2020年夏から試験販売を開始する。

 WIN HRによれば、従来の冷暖房システムと比較すると、エネルギー効率が向上し、消費エネルギー削減につながるため、地球温暖化問題にも貢献できるという。

約−5℃〜−15℃の冷却機能で、最大4時間稼働

 ウェアラブル電子制御冷暖房装置は、富士通ゼネラルとWIN HRが発売を予定している「局所適合環境を持ち歩く」というコンセプトの環境ウェアラブルを実現する電子機器。制御デバイスは、直流電流で冷暖機能を持つ半導体「ペルチェ素子」と、腰または背中に装着するラジエータ部、バッテリー部、コントローラー部で構成。

 冷却時には、ペルチェ素子で、人体の血液の流れが集中する首周りの頸(けい)部を冷ます。発生する熱は、腰部分のラジエータまで、背中のウォータチューブを通して送り放熱する。暖房のときは、直流電流の方向を変えると、冷却面と加熱面が入れ替わるペルチェ素子の特性を生かして頸部を暖める。

 頸部の表面温度は、胸部分のコントローラーで適温に設定可能で、過冷却と低温熱傷を防止し、体温を適切にコントロールする。

ウェアラブル電子制御冷暖房ジャケットのイメージ 出典:クラレ

 ジャケットの性能は、環境温度に対し、約−5〜−15度の冷却機能を有する。可動時間は約2〜4時間。ジャケットの表層には、クラレが製造する人工皮革「クラリーノ」を採用し、裏地は編み目の開いたラッセル編みのダブルラッセル。Tシャツの上からの着用が想定されており、適度なクッション性とストレッチを有し、幅広いシーンでの活用が見込まれる。

 また、クラレでは、導電性繊維や面ファスナー「マジックテープ」に導電性を付与した導電タイプジャケットの設計にも取り組んでいくとしている。

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