国土交通関東地方整備局が管轄する事業所の管理施設では、害虫による被害や含水土への対応といった問題に悩まされている。民間企業ではこういった状況を踏まえ、解決策として、近紫外光やコジェネを活用した乾燥システムなどの開発を進めている。
国土交通関東地方整備局(関東地整)主催の2019年度第1回マッチングイベント「i-Construction推進コンソーシアム『技術開発・導入WG』」が2019年7月9日、さいたま新都心合同庁舎2号館で開催された。イベント中盤では、利根川下流河川事務所や東京外かく環状国道事務所、二瀬ダム管理所がニーズを、中外テクノスと日本農林資源開発がシーズを紹介した。
利根川下流河川事務所 施設管理課 課長の菊池隆氏は、北千葉導水路の管内に大量に付着する特定外来生物「カワヒバリガイ」を除去できるソリューションをニーズに挙げた。
カワヒバリガイは、導水管内のバルブやゲートに張り付つくことで水密部の破損を招く淡水性の貝。最終的には水密不良につながり漏水を起こすという。だが、手作業による駆除は手間がかかる上、引っ付きを防止するシリコーン塗装も高価なため手を出しにくいといった問題がある。
菊池氏は、「導水管内へのカワヒバリガイの付着防止もしくは、容易に除去できるテクノロジーを必要としている。現場試行の期間は2019年11月から2020年3月までで、場所は千葉県印西市にある北千葉第1機場を予定している」と述べた。
こういったニーズに対して、建設コンサルタントや構造物調査などの事業を展開する中外テクノス 経営戦力本部 事業開発企画部 部長の海見悦子氏は、近紫外光照射による生物付着対策技術をアピールした。
409〜412ナノメートルの近紫外光を用いた貝類の除去は、中国電力が発電所の付着生物対策として、取り組んでおり関連する知見や特許を有している。中外テクノスは、中国電力とライセンス契約を結び、近紫外光照射の活用を目指す。
海見氏は中国電力の資料を用いて、近紫外光の仕様や使用方法を説明した。近紫外光は、紫外光に比べて水中で高い透過力を有す。海洋性の貝「ムラサキイガイ」を用いた中国電力の実験では、幼生期に生じる眼点に作用し、付着を抑制した実績があり、環境への悪影響もない。
海見氏は、「近紫外光がカワヒバリガイに効き目があるかの実証試験は日本初であるため、現場試行では、有効な照射方式や設置場所の特定、イニシャルやランニングといった両コストを踏まえた費用対効果を検討する。カワヒバリガイへの照射は、ユーテクノロジー社製高輝度LED光源装置を用いて、直接または光ファイバー経由で行う。導入のメリットは、導水管に照射設備を取り付けることで長期的な作用を生むことや手作業では難しいくぼんでいる箇所や狭さく部でも効力を発揮することだ。課題は、カワヒバリガイが幼生の飼育が困難なため、現地でしか実験をできない点だ」とコメントした。
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