ICT導入に必須!建設業界でお金をかけずに業務改善を成功させるための秘訣建設現場におけるBPR(業務改善)の必要性と実践ポイント(1)(2/3 ページ)

» 2019年07月25日 10時00分 公開

ICTやロボットの導入に必要な「業務クリーニング」とは

 端的にいえば、ICTやロボットの導入は、業務プロセスの見直しを行った上で検討されるべきだ。具体的には「建設現場で行われる作業を定量的に見える化して、作業改善で取りのぞけるようなムダ・ロスは徹底排除し、標準化まで終えておくべき」である。つまりICT化やロボット化の前に「業務クリーニング」をしておくことが望ましい。

 業務クリーニングをしておく理由は幾つかあるが、最大の理由は、ムダ・ロスを内包したままICTやロボットに作業を置き換えてしまうことは、本来不必要なプロセスにまでお金をかけることになる。また、ムダ・ロスの引き金となっている原因も抱えたままになるので、システムやロボットが頻繁に停止し、そのお守りのため人が手離れできない状態となる。

 この課題を抱えていたA社の事例を紹介しよう。A社では毎日40人近い作業員が部材の入ったカゴを片っ端からひっくり返し、数時間かけて部材を探し回っていた。そこで、どこにどの部材が置かれていても分かるように、一つひとつの部材にICタグを取り付けてタブレット端末から見られるようにする施策を講じた。

建設会社で工具が散乱していることは珍しくない

 実に数千万円という費用を投じたが、一定の成果は挙がり、作業効率も高まったという。そして数カ月後、このICタグによる部材探しの横展開を、当社がお手伝いさせていただくことになった。

 当社は、“手段ありき”としない改善ポリシーに沿って、ICタグ導入の前に、まず「なぜ部材探しに時間がかかるのか」を明らかにすることにした。すると、実に単純な理由であることが分かった。A社では、そもそも部材の置き方に何のルールも存在しないこと、さらに部材納品時の配置順と現場の使用順が真逆だったことが判明したのだ。

 そこで、まず部材の置き方のルールを決めて現場に掲示することにした。次に部材納入業者と協議して、部材納品時の配置順を現場の使用順に合わせてもらえるようになった。これにより現場では、「次に使う部材が常に一番使いやすい配置にある」という理想的な環境が実現できた。まさに業務のクリーニングによって、数千万円かかるICタグと同等の効果が得られたのである。また、今後の横展開で発生する予定だった数億円の投資を未然に防ぐことができた意味も大きい。

 前述した「ムダ・ロスを内包したままICTやロボットに作業を置き換えてしまうことが、本来不必要なものにまでお金をかけることになる」という事例そのものである。

業務クリーニングの手順

 ここで「ICTやロボットをうまく導入するための業務のクリーニング」について、検討手順を確認しておきたい。

1.まずは、建設現場作業の業務プロセスを見直す

(作業を定量的に見える化し、作業改善で排除できるムダ・ロスは徹底的に排除し、誰でも同じ時間で、間違えることなく繰り返し行えるよう作業を標準化すること)

2.次に、人手で行っていた作業をICTやロボットに置き換える

(前提として、置き換えた方が効率的に作業できたり、安全であったり、品質が向上する作業を対象とすること)

 これらは一般的にBPR(Business Process Re-engineering)といわれるものだ。BPRでも、作業レベルの改善から着手し、プロセスレベルの改善に発展させながら業務をクリーニングしていく。その上で、設備やシステムの置き換えに着手するというアプローチを基本形としている。尚、BPRは業務改革や業務改善ともいわれるが、生産性革命もこの一部であると当社は位置付けている。

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