国が示す「空の産業革命のロードマップ」では、2019年度からはレベル3「無人地帯での目視外飛行」のフェーズに入った。最終のレベル4「有人地帯での目視外飛行」が実現すれば、建築物の点検、物流、警備業務といった都市部でのドローンサービスが本格化することが見込まれる。この前段階として、東京都では、ドローン特区の多摩地域での実証実験やインフラ点検の有効性検証に乗り出している。
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東京都主催の「産業×ドローンセミナー」が2019年7月2日、東京都庁第1本庁舎大会議場で開催された。セミナー前半では国の動向を中心に、航空法の概要やレベル4“目視外飛行”の実現に向けた環境整備への施策などが紹介された。本稿では、国土交通省、経済産業省、東京都のそれぞれの取り組みをレポートする。
開会あいさつは、東京都 戦略政策情報推進本部 特区推進担当部長・米津雅史氏が登壇。「産業をテーマにしたドローンのセミナーは初の試み。とくにドローンは最近、様々な業界で高い関心が集まっている。本セミナーでは、国土交通省や経済産業省など国の動向や地方自治体の取り組み、さらに最先端のドローンビジネスを手掛けている企業にも、ご登場いただく。都では、東京というフィールドで、どの様にドローンをビジネス化できるか、国からもアドバイザーを招き、ドローンに賭ける皆様の熱い思いに応えていきたい」と抱負を語った。
続く講演では、国土交通省 航空局 安全部 安全企画課 無人航空機 企画調整官・徳永博樹氏が、無人航空機に関する航空法の概要と、環境整備に向けた施策を解説した。
ドローン規制の契機となったのは、2015年に千代田区永田町の首相官邸ヘリポートにドローンが落下した事件。その後、2015年9月11日には、無人航空機の基本的なルールとなる「航空法の一部を改正する法律」が公布された。ここで対象となった機体の定義は、飛行機や回転翼航空機などであって人が乗ることができないもので、遠隔または自動で操縦して飛行させられるもの(重量は200グラム未満のものを除く)。
航空法では、飛行許可が必要となる規制で、2つのエリアを禁止空域に指定している。1つは航空機の航行の安全に影響を及ぼす懸念がある「空港などの周辺の上空」と「150メートル以上の高さの空域」。もう一つが人または家屋の密集している地域の上空で、人口集中地区(DID)といわれる都市部。
飛行方法も、夜間飛行は原則認められず日中のみに限られること、目視内で常時監視が必要なこと、人または物から30メートルの距離を取ること、イベント会場など人が集まる場所では飛行させないなどの制約も設けられている。違反した場合は、50万円以下の罰金が科せられるが、災害時などで、国や地方公共団体との災害協定などに基づく、救助・捜索などのケースは適用除外となる特例措置もある。
ドローンに関する航空法の施行後、2019年5月31日までに国交省に対して、合計8万2424件の申請があり、このうち2018年度だけで3万6895件の許可・承認の審査が行われた。2018年はおよそ月3000件だったが、今や月4000件となり、申請件数は確実に増加している。
ここ数年で、問題となっているのが、外国人観光客によるドローン飛行で、2019年5月の渋谷スクランブル交差点でのフライトや中国人による東京駅付近での飛行がトラブルとなった。外国人観光客は、ドローンの規制があることを知らないため、国交省では、英文をはじめ、中国語、タイ語でもポスターやパンフレットを作成し、さまざまな場所に掲出して周知を呼び掛けている。
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