建機の現場設置イメージをタブレット上に可視化、戸田建設が開発した「建機AR」AR

戸田建設はAR技術を活用して、建設機械の配置計画を見える化する「建機AR」を開発した。将来的には同社の建設現場だけではなく、一般にも使えるようにオープンにして業界全体の安全性向上につなげる。

» 2019年07月02日 06時03分 公開
[BUILT]

 戸田建設は、タブレット端末で建機の3Dモデルと実際の工事現場の映像を重ね合わせてシミュレーションする「建機AR」を開発した。

AR技術で作業所の安全確保と省力化を実現

 建機ARは、AR技術で建設機械の周辺状況や建機稼働時の危険箇所などを視覚的に確認することができる。そのため、建機の配置計画に掛かる時間と労力の削減が図れ、作業員とのイメージ共有も容易となるため、建設現場の安全確保にもつながる。

 使用方法は、タブレット端末上で表示させたい建機の3Dモデルを選択し、建設現場の映像と実物大のモデルを合成して映し出す。表示された3Dモデルをそのまま他の場所に移動させ、高さも自由に変えられるため、設置の可否を検討することが可能だ。

3Dモデル(高所作業車)設置前後のイメージ。設置前(左)、設置後(右) 出典:戸田建設
3Dモデルの設置高さの変更イメージとその表示例 出典:戸田建設

 3Dモデルには建機の性能も反映されており、例えば、クレーンの稼働状況に応じた吊(つ)り荷の許容荷重や所定荷重に適切な作業半径を把握することに役立つ。一度に置ける建機の3Dモデル数には制限がなく、複数台の現場への搬入などさまざまな配置計画の立案に役立てられる。操作はタブレットだけのカンタン仕様で、専用機器などを必要としない。

近接建物がある場所に設置したクレーンの3Dモデル 出典:戸田建設
稼働状況に応じた吊荷の許容荷重の表示例(左)、吊荷と地盤面との境界表示例(右) 出典:戸田建設

 通常、建設現場での建機の設置計画は、仮設計画図と現場を見合わせることで行うが、現場状況は工事進捗に伴い刻々と変化するため、その都度、資機材の搬入経路と作業員の動線確保、危険箇所のチェックが必要だった。

 図面上に建機を設置することはできても、実際には近接建物との距離や関係で、搬入経路や動線の確保ができなくなるケースや建機の稼働範囲が限定されてしまう場合があり、検討と関係者への情報共有に多くの時間が割かれてしまっていた。

 こうした問題を解消する建機ARは、戸田建設だけの使用に限定せず、今後は建機モデルの拡充や操作性の向上を図りながら、幅広く一般にも使えるように公開していくという。

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