天井と空調機の耐震性を同時に向上、天井ブレースの要らない大林組の新制振システム制振構法

大林組は、天井裏にブレース無しで、設計と施工の自由度を大幅に向上させる天井と空調機の新たな制振構法を開発した。

» 2019年06月26日 07時25分 公開
[BUILT]

 大林組は、天井と空調機双方の耐震性向上を合理的に実現する天井制振構法「ロータリーダンパー天井制振システム」を開発し、日本建築総合試験所から建築技術性能証明を取得した。天井制振技術の建築技術性能証明は、国内初のことだという。

耐震天井と比べて、約30%のコスト減

 2011年3月に起きた東日本大震災では、天井自体が揺れたことによる落下に加え、揺れ方の異なる天井と天井埋め込みカセット型室内機の衝突による被害も多数発生した。対策として国土交通省では「特定天井及び特定天井の構造耐力上安全な構造方法を定める件」を公布し、日本建築センターでも「建築設備耐震設計・施工指針(2014年版)」を改定した。

 天井告示では、耐震性の高い接合金物を天井裏全面に配置することや天井ブレースを多数設置することで、揺れずに衝突もしない天井の構築を義務化した。だがその結果、天井裏の設計・施工上の制約が増した。さらに天井の施工コストが大幅にアップするという課題も生じることとなった。さらに、天井告示や設備指針に基づき、天井と空調機の耐震性を別々に向上させても、両者の衝突回避が担保されるわけではないことも問題となっていた。

一般天井・耐震天井の比較 出典:大林組
「ロータリーダンパー天井制振システム」 出典:大林組

 今回開発した天井制振システムは、ブレースのない天井とアングルで補強した空調機をダンパーによって接続することで、天井と空調機の耐震性を同時に上げ、衝突回避も実現する。また、天井ブレースが無いため、天井裏の設計と施工の自由度も大幅に拡大する。

「ロータリーダンパー天井制振システム」の構成 出典:大林組

 地震による天井と空調機の衝突は、重さや硬さの違いにより、両者の揺れ方が異なることで起きる。システムでは両者の間にダンパーを設置し、地震時の揺れを吸収することで、天井と空調機がぶつかることを回避させる。天井の揺れが抑制されるので、天井周辺に設置されている壁などとの衝突も避けられる。ダンパー自体が揺れの力を吸収するため、耐震天井で用いられる天井ブレースを設置する必要も無くなる。

補強フレームの適用例 出典:大林組

 天井ブレースを用いる耐震天井と比較すると、天井裏に取り付けられる機器類・配管・ラックなどの配置計画が自由になり、設置工事も容易。地震時の揺れの大部分をダンパーが吸収するため、ダンパー周辺以外の天井用接合金物に耐震性の高い金物を用いる必要も無くなり、天井ブレースが要らないことも含め、耐震天井と比べて、約30%のコスト削減が見込める。

 システムは日本建築総合試験所の建築技術性能証明を取得。天井告示の「計算ルート(応答スペクトル法)」に規定されている天井面に作用する地震力に対し、天井面構成部材、空調機を含めた補強フレーム、ダンパーの損傷を防ぐことが検証された。天井と空調機の間や天井と天井周辺に設置されている壁との空間確保が可能となり、天井と空調機の衝突、天井と周辺壁などの衝突をそれぞれ回避できることも証明されたという。

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