安藤ハザマとユニアデックスは、技術継承が課題となっている建設業界で、熟練技術者の知見を集約した文書データをAIで自動抽出して、誰もが活用できるナレッジデータ化するシステムを開発した。
安藤ハザマとユニアデックスは、経験豊富な建設エンジニアのノウハウをベースに、AIを活用した“建設ナレッジシステム”を開発し、実証を開始した。
両社は、暗黙知として社内外に存在している施工に関する「ノウハウ」を、多くのエンジニアが自由に活用できる付加価値のある情報「ナレッジ」として形式知化した。
具体的には、過去の案件情報や技術論文、報告書などの施工記録文書に対して、AIを用いた自然言語処理で、文書内に含まれるノウハウを抽出。自動分類した後、重要度に着目したスコアリングを行ってナレッジ化する。これにより、適切なタイミングで必要な知識を引き出すことが可能となる。
開発したシステムは、安藤ハザマが持つ施工管理技術と、ユニアデックスが保有するAIコンサルティング力とを融合させて実現した。
開発の背景には、建設業では就業者の高齢化が著しく、熟練エンジニアが持っている豊富な知識や経験などを次世代へ伝えていくことは喫緊の課題とされていることがある。建設工事を円滑に進めるうえで重要なことは、さまざまな施工条件に応じて、採用すべき作業方法や工事現場周辺の環境に与える影響への対策などを、施工の各段階の適切なタイミングで活用していくことが求められる。
さらに他の工事で起きた不具合など、施工計画と施工管理で考慮すべきことは、絶え間なく増えており、こうした膨大な情報は工事ごとに記録される一方で、情報管理が万全ではなく、どう適切に活用するかは、これまで各エンジニアの経験に裏付けられた判断に依存しているのが実情だった。
新システムの共同実証実験では、安藤ハザマが施工を担当している山岳トンネル工事に適用した。工事の担当エンジニアが持つノウハウと、システムから抽出されたナレッジを組み合わせ、施工計画を立案する際に精度の高いリスクマネジメントが可能になったという。安藤ハザマでは、蓄積された多様なデータから、各工事に関連が深い事項をAIが自動的に抽出する機能は、人間とAIが協調する新しい業務スタイルと位置付けている。
今後はシステムの適用範囲を、山岳トンネル工事以外の土木・建築工事にも拡大させる。システムの活用によって、施工計画と施工管理の手法を深化させ、熟練エンジニアから若手エンジニアへの円滑な技術伝承に役立てる。
また、ユニアデックスでは、全産業に共通する熟練技術の継承という課題解決のため、共同実証で培った技術を生かし、蓄積されたノウハウをAIでナレッジ化して解決するサービスとしての提供を検討している。
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