空気調和、給排水衛生、電気、情報通信などの幅広い設備事業を展開している日比谷総合設備。建築設備の点検・保守業務の効率化を目指し、パノラマ画像と、設備機器の説明書などのデジタルデータを融合させたパノラマシステムの開発に取り組んでいる。
「ファシリティマネジメント フォーラム2019」が東京・江戸川区のタワーホール船堀で2019年2月に開催された。本稿では、日比谷総合設備の「パノラマ画像を利用した現場取り扱い説明書『VTM(バーチャルツアーマニュアル)』」をテーマにしたセミナーを振り返る。登壇者は、日比谷総合設備エンジニアリングサービス統括本部管理部主任の佐藤純一氏。
1966年に創立した日比谷総合設備の社名は、社屋が日比谷界隈(かいわい)にあったことと、クライアントとしても縁(ゆかり)の深い日本電信電話公社が当時日比谷公園の隣にあり、“日比谷本社”と呼ばれていたことに起因する。
現在では、全国9支店と13営業所を構え、空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、情報通信設備など幅広い設備領域をカバーして、企画から、実施設計や設備導入の構築、運用改善や点検・保守の維持管理まで、建物のライフサイクル(LC)全般にわたるサービスを展開している。佐藤氏が在籍するエンジニアリングサービス統括本部では、図面やCAD施工図の作成支援、BIM対応などといった現場のICT推進のサポートを担っているという。
バーチャルツアーマニュアル(VTM)は、2014年から展開している「現場調査支援システム」のフェーズ1で活用した“パノラマビュー”がベース。パノラマビューは、Webブラウザ上でパノラマ写真を表示させ、施設状況を確認するツール。パノラマ画像上には、設備の情報を付加することもできる。このツールを建築設備の維持管理に重点を当て、発展させたのがバーチャルツアーマニュアルだ。
近年は、VRゴーグルを装着して、360度パノラマ画像を用いたバーチャルリアリティー体験が一般にも広く浸透してきている。パノラマVRツアーは、複数のパノラマ画像を使用し、体験者が任意で見たい場所に移動することで、その場所を実体験としてツアーをしているかのような臨場感が得られる。導入例としては、宿泊施設のHP、不動産のバーチャル内見、自動車産業でのVR研修、災害対策VRなどで活用が進んできている。このバーチャルツアーと建築設備の取り扱い説明書を融合させたものが、日比谷総合設備のバーチャルツアーマニュアルとなる。
これまで建物の維持管理で使用する取扱説明書や竣工図は、書類で納品して使用することが多かったが、紙の情報がデータベース化され、現場にタブレットを持ち込むことで、必要な書類をいつでもどこでも閲覧することができるようになる。
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