“電線を自動追尾”しながら4K撮影、アルプスアルパインが東芝のAI画像解析を用いて関電で試験導入第5回国際ドローン展

アルプスアルパインは、「第5回国際ドローン展」で、関西電力、東芝デジタルソリューションズと共同で2019年2月に試験導入した送電線のドローン点検システムを披露した。

» 2019年04月22日 07時24分 公開
[石原忍BUILT]

 アルプスアルパインは、ドローンの産業利用をテーマとした専門展示会「第5回国際ドローン展」(会期2019年4月17〜19日、幕張メッセ)で、架空地線の“自動追尾”機能を有するドローン送電設備の点検システムを紹介した。2019年3月に関西電力の京都府内での点検工事で試験導入されている。

鉄塔径間の全域にわたり、架空地線の状態を把握

 ドローン送電設備の点検システムに使用する機体は「UAV-DS200」。アルプスアルパインのセンシング技術と機体制御技術を組み合わせ、観測対象物を正確に捕捉するとともに高解像度の映像を撮影することが可能なドローン。

 LiDARを使用し、雷の直撃から送電線を保護するために鉄塔の頂部に架けられたアース線「架空地線」を目印に、自動で電線の追尾飛行を行う。電線のたるみや風による揺れでも、電線と一定の距離を保ち自動追尾を続ける。

「UAV-DS200」
架空地線の自動追尾点検と4Kカメラで撮影した動画

 飛行の流れは、鉄塔目指して離陸。鉄塔上部の安全高度まで上昇して、架空地線を追尾しながら撮影する。搭載カメラは4Kで、架空地線の漏電した熱で損傷したアーク痕(あと)などの異常箇所を正確に把握できる。電動ジンバルは、カメラの向きを自動調整し、画角の中心に架空地線を置いた状態で動画撮影する。

 UAV-DS200のサイズは、直径1189×軸間730×高さ347ミリ。重量はバッテリー含め6.5キロ。運用範囲は無線が最大到達する約1キロ。追尾性能は、追尾径間長は最大700メートル。追尾電線角度は傾き最大50度。追尾する飛行速度は最速で毎秒3メートル、平均で毎秒2メートル。

架空地線の自動追尾

 自動追尾を可能にするドローンシステムの構成は、機体システムと、手軽に航路を作成できるフライトプラン作成支援ツール、地上局ソフトウェア。フライトプランの作成支援は、鉄塔の情報と離着陸位置をデータベース化して管理。地形状況や飛行時間に合わせた飛行計画が立てられ、人口密集地区(DID)や高度150メートル以上などの注意や申請が必要なエリアを確認することができる。

フライトプラン作成支援ツールの画面

 基地局のソフトウェアは、位置情報など飛行中に必要な運行管理情報をリアルタイムに確認。インタフェースは、機能を厳選し、シンプルで分かりやすい。安全な航行に必要なドローンと架空地線の位置関係をレーダーで表示し、ミッション進行状態、現在速度や到達高度などの各種情報の他、万一の事故に備えたフェイルセーフの設定も行える。

基地局ソフトウェアの画面
基地局ソフトウェアの画面で、ドローンと架空地線の位置関係を把握

 電力インフラの点検はこれまで、落雷による架空地線のアーク痕などの設備損傷箇所を把握するため、架空地線上を自動走行させたカメラの撮影画像で、異常の有る無しを確認していた。しかし、山間部などの場所では、現地への移動に時間を要し、人が鉄塔に昇ってカメラの設置や自走後に反対側の鉄塔で回収するなど、高所での危険が付きまとう作業が必要だった。

 関西電力、東芝デジタルソリューションズ、アルプスアルパインの3社は、ドローンの架空地線点検の実用化を目指し、鉄塔と鉄塔の間「径間」約600メートルの長距離飛行や急勾配飛行などのテストを行った。今後の方針は、まずは関西電力の送電線を対象に、本格導入に向けた検討を進め、東芝デジタルソリューションズの画像解析技術をさらに発展させ、AIを活用した異常箇所の自動検出技術の実用化を目標としている。

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