熊本大学と大和ハウス工業、大和リースは2019年4月10日、応急仮設住宅の早期提供を目指した共同研究の契約を締結した。研究では、BIMソフトウェア「Revit」上で、応急仮設住宅の配置計画を立てる際に、住戸や駐車場を自動配置するプログラムを開発。従来は、1週間を要していた工程が数時間に短縮されるという。
熊本大学と大和ハウス工業、大和リースは2019年4月10日、応急仮設住宅の早期提供を目指した共同研究契約を締結した。契約期間は2019年4月1日〜2021年3月31日。
応急仮設住宅を災害発生から被災者に供給するにあたって、各都道府県では市町村と連携し、期間を短縮するため、事前に建設候補地の選定や建設計画を作成している。しかし、災害の規模によって、建設工事が早急に進まず、着工までに相応の時間がかかってしまっていることが課題とされていた。
この実情を把握するため、熊本大学大学院先端科学研究部の大西康伸准教授は、2016年熊本地震における応急仮設住宅団地を調査した。計画に携わった担当者にヒアリングするなどして、着工までに要する期間を分析した結果、建設候補地の調査を含め、およそ1週間は配置計画案の作成や承認に時間を要していることが判明したという。
大西准教授は、2017年6月より、応急仮設住宅の配置計画案を作成する時間の短縮を目指し、BIMを利用した配置計画案の自動作成に関する研究を開始した。国内最大規模の応急仮設住宅の建設を手掛けている大和ハウス工業と大和リースは、この部分の業務プロセス改善に着目し、大西准教授が開発した自動作成プログラムを用い、配置計画案の作成を試験的に行った。その結果、約1時間で配置計画案を作成することが実証されたという。
開発した自動配置プログラムは、オートデスクのBIMソフトウェア「Revit」を使用して、2D図面上の敷地内に幹線道路や住戸、駐車場を自動で配置。さらに、集会所や設備などを建てるスペースとして、空き地も自動作成し、その規模も人の手を使わず計算する。規模や数量を記載した表計算シートも自動で生成。最後に簡易モデルから3次元の詳細モデルへと置き換える。これまで手動で、住戸と駐車場が同数になるように配置したり、1DK/2DK/3DKの住戸タイプ比率を調整したりしていた手間が省かれる。
また、自治体の担当者とのやりとりでも、図面を見せて、持ち帰って修正を反映するなど、煩雑だったが、配置計画の過程を共有することで解消される。行政の仮設住宅の担当者も、3Dモデリングであれば、知識が無くても、ウォークスルーの様な使い方で、合意形成を図ることも可能だ。
3者は、BIMの3次元可視化や属性情報といった特性を生かし、配置計画案だけに限らず、応急仮設住宅の供給に必要な計画から、設計、生産、施工、さらには完成後の維持管理までの全過程への活用を目指している。大西准教授は、「配置計画作成で1週間。設計から、生産、施工までの工期でプラス1週間のトータル2週間程度の短縮が見込める」と期待を寄せる。
大和ハウス工業では、「応急仮設住宅が必要とされるケースに、現場での検証をこれから進め、2020年の運用開始を目標としたい」と話す。
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