大成建設が施工を手掛けた近畿産業信用組合の本店が竣工した。本店は「伝統×革新」をコンセプトに設計された最先端の省エネルギー建物。都心部の高層ビルでは、実現が難しいとされていた経済産業省が定める省エネビル基準「ZEB Ready」に相当するエネルギー削減率を達成した。
大成建設は、大阪市中央区淡路町で、近畿産業信用組合が発注した「近畿産業信用組合本店」を完成させた。高断熱化と高効率な省エネルギー設備を備え、一般的なオフィスビルと比較して、年間1次エネルギー消費量61%の削減を実現した。
本店が建設された大阪市の北浜エリアは、大阪証券取引所ビルをはじめ、銀行や信用組合の本店が密集する関西圏における金融の中心地。建物の多くは、石が多用され、重厚かつ伝統的な金融機関らしいデザインが多く見られるという。
近畿産業信用組合本店の意匠も周囲の建築物に合わせる形で、「伝統×革新」のコンセプトを石と近代的なガラスで構成された“ダブルスキン”の外装で表現。デザイン性だけではなく、環境性能も両立させた建物とした。
外観の特徴となっている外装のガラスには、遮熱/断熱性能に優れた「Low-E複層ガラス」を採用。窓辺には、「太陽光自動追尾型ブラインド」を設置し、効果的な日射遮蔽(しゃへい)が可能となっている。その他、ダブルスキン内の熱を利用した空調システムや人を検知するセンサーを利用した照明制御「T-Zone Saver」、ビルエネルギー管理システム「BEMS(Building and Energy Management System)」などを導入している。BEMSの一環として、1階に置かれているエントランスモニターでは、建物内で使用する電力を照明、コンセント、空調、熱源の4つの用途に分類して、エネルギーの見える化をしている。
こうした多様な省エネ技術を駆使することで、一般的なオフィスビルに比べ、約61%の年間1次エネルギー消費量を削減し、“ZEB Ready”を実現した高層ビルとなっている。
ビルの構造は、S造/一部SRC造の18階建て最高高さ77.86メートルで、信用組合の本店ビルとしては国内で最も高いという。総合設計制度を採り入れることで公開空地を設け、さまざまな種類の樹木や草花といった緑が多く、夜間は照明により、明るさを確保することで潤いと温かみのある空間を街に提供。ビル外壁も季節に応じたカラーでライトアップして、地域のシンボルとなることを目指している。
近畿産業信用組合は、こうした取り組みを環境共創イニシアチブ(SII)が公募する「ZEBリーディング・オーナー」に登録し、ZEBの普及に取り組んでいる。また、国土交通省の「2016年度サステナブル建築物など先導事業(省CO2先導型)」に、関西の金融機関で初めて採択もされている。
近畿産業信用組合本店の所在地は、大阪市中央区淡路町2-1-3。建築面積は658.76平方メートル、延べ床面積は1万1335.38平方メートル。
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