記者発表会で、三菱地所 ビル運営事業部 専任部長・川口英彦氏は、開発目的について、「既存の自動清掃ロボットの更新時期を迎えるにあたり、これまで2種類のユニットを運用していたのを1種類に集約。ビル運営管理の合理化を目指した。また、労働市場が縮小し、人手不足が深刻化するなかで、ロボットでの作業の代用を考えた。この2つの課題解決を日本ビソーに相談し、開発に着手した。関節を有するロボットのため、清掃だけでなく、作業ヘッドを代えれば、外壁工事や安全点検など多目的で活用することができる」とした。
日本ビソーでは、「本設ゴンドラ事業」「仮設ゴンドラ事業」「外装工事事業」「インフラメンテ事業」の4つを“BVE(Building Value Engineering)”と位置付けて展開し、今回のロボット開発もビルの価値を高める一環として行った。2008年には試作1号機、2015年に2号機による技術検証を経て、オフィスビルの運営管理に関して継続的な合理化を目指す三菱地所の申し出を受け、今回の実証に至ったという。
既存の自動窓拭き機は、10〜40mm(ミリ)の拭き残しがある他、四角形状で幅寸法固定でしか対応できなかった。MWR-1は、作業スピードは劣るものの、センサーで検知し、「ティーチング・プレイバック」させて動作をプログラミングしているため、窓の形状は問わず、サッシ・ルーバー状でも清掃が可能。また、パーツの数が少ないため、後々のメンテナンス面を考えた際にコスト低減につながるメリットもある。
日本ビソー 本設ゴンドラ事業本部 技術統括部 部長・道越正大氏は、「高所の外壁では、窓拭きだけではなく、調査・診断をはじめ、改修工事で行われる塗装、洗浄などがあり、試作機は人に代わって自動化することを目的に、新型の自動窓拭き機としてではなく、“多目的”壁面作業ロボットをコンセプトに開発を進めている」と説明。
2014年には同社の長崎工場で、ヘッドを付け替え、外壁タイルの剥落(はくらく)を調査する自動穿孔のテストも行っている。
今後の方向性としては、カメラでの形状認識とAIによる判断も、視野に入っている。現状の課題では、ビル建設時に外壁に取り付けられる“ガイドレール”の耐荷重などがあるため、他のビルへの適用を考えると軽量化や汎用性を持たせることが必要とされる。
単純なコスト比較では、清掃単体では専用機の方が割安で、既存機4台で11日かかる日数がMWR-1では倍かかってしまう。清掃方法がソフトタッチであることや、スキージーの長さなど改善点もあるが、清掃だけではなく、多目的で使うことで始めて、総合的なコスト低減につながるのだという。
実用化について道越氏は、「既存機の更新のタイミングはまだ先なので、3-4年をめどに開発を進めていきたい」とした。
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