リヒテンシュタインに拠点を置き、建設向けプロフェッショナル用の工具をグローバル市場に供給しているヒルティは、2018年で日本進出を果たしてから50周年を迎えた。この機に、日本の建設市場で工具や重機といった資産をICT技術によって一元管理する新たなソリューションを本格展開する。
ヒルティは、建設業のプロ向けに、ドリルやブレーカー、あと施工アンカーといった工具、材料、サービスを全世界で提供している。1968年に日本法人の日本ヒルティを設立してから50年目となる節目に、海外では先行運用している工具や機材の管理システム「ON!Track」を日本でも本格的に提供していく。
日本ヒルティ マーケティング本部 サービスマーケティング マネジャー・大久保薫氏に、ON!Trackの開発経緯や今後の展開などを聞いた。
――ON!Trackの開発意図とは?
大久保 ヒルティのグローバル市場でのユーザーは、95%を建設業が占め、直販をメインに日々20万件以上の顧客とコンタクトを取ってニーズに合わせた最適な製品を提案している。
建設業ではここ数年、将来的な人手不足を見据え、IT化による生産性の改善が喫緊の課題とされている。世界的にみてもこのトレンドは変わらず、業界全体での普遍的なテーマといえる。この課題に対して当社では、工具の機械化だけではなく、IoTソリューションによる解決を目指した。
工具という観点から生産性向上をみれば、“作業性”の高さはもちろん、ケガをして作業が中断することが無い“安全性”、壊れない“堅牢性”、作業前後も含めた全体の“効率化”が求められる。作業性や安全性、堅牢性は工具のスペックの問題だが、効率化のためには、新たなソリューションが必要になる。
とくに建設現場では、「工具はどこいった?」というトラブルが日常茶飯事で起きている。多くの現場では、ホワイトボードやドアノブに吊(つ)るしたノートなどで管理しているが、道具は現場から現場へ、人から人へと、貸し借りが毎日のようにあり、適切に管理するのは困難を極める。そうなると、膨大な数から探す手間が生じ、修理が必要な工具も分からず、いざ使うときに用をなさないことも起こりうる。こんなことでは、生産性向上どころかロスにつながってしまう。さらに、不適切な管理の下、紛失してしまえば、資産の損失にもなりかねない。
所有している全ての備品や工具を把握し、それらが今どこにあり、誰が使っていて、メンテナンス時期がいつなのかを一元的に管理し、建設現場の生産性向上に貢献するツールとして、「ON!Track」は開発された。
――ON!Trackの機能
大久保 ON!Trackの使い方はシンプルで、頑丈な専用バーコードを工具や備品に貼り付け、クラウドベースのソフトウェアに情報を登録して、互いをひもづける。作業者は手持ちのスマートフォンやタブレットでバーコードを読み取るだけで、アプリ上には工具の移動履歴や誰が使用しているかなどの情報が表示される。
アプリでは、所有者や所在地の把握と、返却日設定、アラート機能、写真・メモでの履歴の添付の他、現場で使うマニュアルをJPEG/PDF形式で登録しておくような使い方もできる。仮に、野立て看板にバーコードを貼って登録しておけば、いつ点検したか前回の点検内容を残しておくことができ、法令で定められている定期点検時の前にはアラートで知らせることも可能だ。
ON!Trackでは、バーコードの貼り付けとクラウド登録のサポート、導入後のカスタマーサービスも提供する。ヒルティ製品限定ではなく、数量・ブランドを問わず、工具、車両、重機、人、設備などにも適用でき、各場所に何がどれだけあるかという“コスト管理”にも役立つ。
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