日本設計とオートデスクは、BIMに関するパートナーシップ契約を2015年に結んでいるが、このたび新たに3年間の契約を更新する。この提携では今後、BIMを中心に据えて、日本設計が得意とする“超高層・大型案件”への対応や世界的にも遅れている“電気設備BIM”など、建築物の今以上の高品質化・高性能化に、BIMを最大限活用して取り組む。
日本設計とオートデスクは2018年11月21日、東京・晴海のオートデスク日本本社で共同記者説明会を開催した。
日本設計とオートデスクは、オートデスクとしては国内初の業務包括契約(EBA)を2015年に締結。以来、オートデスクが提供するBIMソフトウェア「Revit」を駆使して、建築・構造・設備の全情報を一元的に管理する“Integrated BIM”に取り組んできた。Integrated BIMは、整合性の向上や形状の最適化、性能の可視化、数量把握、その先に位置するファシリティマネジメントへの活用までが一つのBIMデータで完結されるBIMプラットフォームの試み。
説明会で、日本設計 代表取締役社長・千鳥義典氏は、両者の提携がもたらした成果について、3点を挙げた。「まず、オートデスクのBIMソフトウェアを自由に使える環境になったことで、BIMの新たなチャレンジに臨めた。また、サポートを受けながら海外の設計事務と意見交換やスタッフの海外派遣が可能になり、最新の海外BIM動向がつかめるようになった。3つ目は、オートデスクのトップ技術者と交流が持てたことで、日本仕様のBIMの検討や開発に協力してもらっている」と、この3年間を振り返った。
一方で、オートデスク側のメリットして、アジアパシフィック アカウント営業部シニアディレクター ルー・グレスパン氏は、「当社にとって日本市場は、世界第3位の市場という重要な位置付け。だが、BIMに関しては、英国、米国、シンガポールで先に広がったが、日本はまだまだ。その点でいえば、日本設計はBIMのパイオニア的な存在となっている」と意義を強調した。
実際にオートデスクのEBAは、海外ではトップカスタマーとのみ締結しており、2014年に国内で初めて日本設計がパートナーとなり、翌年に正式な業務包括契約(EBA)を締結した。これが契機となり、現在では、大和ハウス工業や大手ゼネコンなど12社以上も協力関係を築くことにつながっているという。
日本設計では、このパートナーシップを更新した次のフェーズでは、「建物の高品質化・高性能化」「BIMワークフローの検討」「ビッグデータの活用」の3本柱を構想している。高品質化とは、近年の建築物の大型化や複雑化を受けて、建築・構造・設備それぞれにBIMを用いることで整合性を向上させるというもの。高性能化では、BIMを活用して、LEEDやWELLといった建物の環境・省エネ認証に対応することを目指す。
高品質化・高性能化を進めるための重点的強化策では、データが膨大になる「超高層・大型案件」、プログラミングツール“Dynamo”による「電気設備設計」、米国で先行している建物性能解析ソフトウェア“Insight”の日本ローカライズなども含めた「高精度のシミュレーション」、省エネ適判などの「各種申請」に、それぞれに対応していくことが示された。中でも、日本設計の受注の大半を占める超高層・大型物件への対応は最重要課題とされた。BIMはパーツを組み合わせていく手順のため、中規模から大規模に大型化すると、10万単位でパーツが増え、扱うデータが膨大になる。これをどう管理し、不整合を見つけていくかがこれから乗り越えていく障壁となる。
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