立命館が研究を進める“非破壊試験”を駆使したインフラ点検の早期評価技術インフラメンテナンス(2/3 ページ)

» 2018年11月01日 10時00分 公開

鉄筋腐食のメカニズムを知る

鋼材の腐食が与える耐荷力への影響

野阪 もう一度、なぜ橋が落ちるのかを再確認したい。端的には構造物の劣化により耐荷力がなくなり、荷重を支えられなくなった時である。ただ、仮に鋼材の腐食が与える耐荷力への影響を挙げれば、一口に引張・圧縮・せん断・曲げと言っても、細分化されてしまう。これを全員が理解するのは困難だろう。最も重要なのは、劣化すれば即落橋というイメージではなく、適切な維持管理であることを強調したい。しっかりと劣化状態を判断し、橋への影響も理解できる技術者の養成が急務である。橋の多様性もあり、劣化の把握と対策は簡単ではない。そして5年に一度の点検を維持するには、人手・コストともに課題は残されている。これを解決する新しい技術や方法の研究、人材育成が大学としての重要な責務と捉えている。

物を壊さずインフラ内部情報を取得する「非破壊検査」

立命館 理工学部准教授の川崎佑磨氏

川崎 インフラ診断の精度に大きな影響を与えるのが点検。その中から、非破壊試験法について述べたい。非破壊試験法とは、弾性波・電磁波・電気科学的性質といった物理現象や化学現象などを利用し、文字通り物を壊さずにインフラ内部の情報を得る方法である。

 利点としては、交通規制を敷くことなく車両の運行を妨げない、データに基づく劣化のグレーティング、予防保全の3つが挙げられる。

 私の研究対象である弾性波は、何かしら人が操作して点検する超音波法・衝撃弾性波法・打音法と、個体内部で発生する音をセンサーで受け取るAE(アコースティック・エミッション)法に分類される。AE法は距離による到達時間の差から位置特定も可能とする。

弾性波の分類

川崎 破壊という現象は、パッと見れば急に生じたように感じるが、最初は非常にミクロなものからはじまり、それらがつながることでマクロなヒビ割れとなり、致命的な損傷に至ってしまう。すなわち、最初の段階にあるミクロな破壊をいかに早く検知するかが課題である。私が長年研究を続けている「AE-SiGMA解析」では、前述の位置情報とは別に、引張型・せん断型といったヒビ割れの形状をはじめ、向きや方向などの角度も決定づけることができる。

SiGMA解析

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