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» 2018年10月10日 06時00分 公開

OKAMURA Design Space R企画展:新居千秋氏が4室の茶室を配し、“糸”と照明色で日本建築のスケールと光を再現 (2/2)

[石原忍,BUILT]
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薄暗い茶室の中に漂う光を再現

歴史的建築物のスケールを表したSomesthetics総覧図屏風
参加アーティスト。左から大原崇嘉氏、古澤龍氏、柳川智之氏

 選定した4茶室は、10の要素、すなわち床(ゆか)、炉、窓、にじり口、床(とこ)の間、柱、中柱、天井、中敷居+鴨居、戸当たりを抽出し、42×42mmの木柱の抽象化されたデザインコードと見なして表現。全ての素材が排除され、木枠のみで構成された4つの茶室からは、日本的で非常に純粋な身体性が浮き上がることをねらっている。

 新居氏は、近代以降の人工灯の発達で、これまでの日本的な光が失われてしまう懸念を表明した谷崎潤一郎著の「陰翳礼讃」を引用。茶室の空間は闇とつながり、曖昧な境界線で、色とモノが乖離した状態を生み出すとした。

 3人のアーティストは、茶室全ての22個の窓に、色の付いた“糸”と照明色がもたらす色彩作用を計算して、展示空間全体を暗闇に閉じ込め、茶室の中に漂う淡い光を再現した。壁を廃した茶室と窓に張られた糸は、背景を透過させることで、近寄れば糸が見え、離れた場所から見れば、青と赤で紫などの混色した窓を面として見ることができ、暗い室内での混在した視覚表現をもたらす。

茶室の窓を模した部分に色付きの糸を取り付け、遠近で異なる視知覚を狙った

 展示空間を暗闇にした理由は、日本語には「日の出」と「日の入り」の時間帯を表す言葉が多様に存在することがある。これは日本人が西洋人に比べ、低照度での室内環境で生活していたことに由来するとして、「日本人は薄暗い中のわずかな暗闇の変化をより繊細に感じ取る視知覚があったのではないか」と説明。

委員長の川向正人氏

 作品では、糸と照明の表現で、(1)時間に応じて移ろう窓、(2)視点によって変化する見え方の2つの表現を構成。糸は赤、青、緑のRGB三原色で、白色の照明下では、そのままの色を知覚する。赤色の照明光では、青や緑の糸は、反射可能な周波数帯が光源に始めから含まれていないため、黒く見える。

 実際に糸の色の配分はそれぞれの窓で異なり、会場全体の端から端へ色相がグラデーションになるよう考慮されている。全照明の色相は、窓自体が太陽の軌道に準じて移ろっていく仕掛けにしている。

 ファシリテーターの川向氏は、「建築の世界はここ数年、哲学のように理念や抽象的な概念に向かっているように思える。これに反して今展では、建築物から受ける感覚を科学的に分析して、ある種の実験的な試みを行ったといえる」と評した。

 会場前の展示スペースには、作品の制作過程で生み出されたSomesthetics総覧図屏風と、茶室のモックアップが展示され、度重なる思考実験のあとがうかがえた。

Somesthetics総覧図屏風
多数制作された茶室のモックアップ
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