港湾分野でのドローン活用では、国土技術政策総合研究所 沿岸海洋・防災研究部 沿岸防災研究室 室長・鮫島和範氏が解説。
鮫島氏は港湾施設の現状を「港湾施設は高度成長期に集中的に整備した施設で、急速な老朽化が進んでいる。係留施設は建設後50年以上の施設が2016年3月の約1割から、2026年3月には約6割に急増している」と危機的な状況を示した。
港湾施設は、台風による損傷で供用期間中に要求性能を失うこともある。特に点検診断は通常は5年に1度、重点点検施設は3年以内1度とされ、「目視による点検」はドローンの活用がによる効率化・省人化が期待されている。
港湾の維持管理では現状、十分な体制(人数、技術力を持つ人材)と予算の確保が困難なことがハードルとなっている。そのため、ドローン点検に求められている要件としては、目視点検の代替となりうることや技術的・コスト的ハードルが低いことが要求される。
現状では、自動的に施設変状の抽出を行う3D/4Dデータによる点検・診断システムの開発が進められている。これにより、専門技術が必要となる部分をシステムが代替し、現場担当者の負担が軽減する。直営での点検も可能になるため、点検コストの削減も期待されている。
次の一手となる港湾でのドローン活用では、港湾構造物は桟橋のように立ち入りが難しい箇所が多く、水中にある部材も多数存在するため、こういった箇所への活用がカギとなる。現在は、潜水夫や船舶からの目視点検が行われており、安全面からも水中ドローンの利活用が期待される。現段階で水中ドローンは、「遠隔操作型無人潜水探査機」「自律型無人潜水探査機」「桟橋裏側点検用ロボット技術(ROV)」の3タイプの方針で開発が進められている。
今後の解決すべき策として、GPSが使えない水中や桟橋裏側でGPS以外の手法で位置情報を取得することやコンクリート・鋼材の変状を把握する技術の確立、水中部での点群データ作成において専門技術者の海面ノイズ処理をAIを活用して画像処理の効率化、さらに全体的なコスト低減などが、ドローン活用の促進につながるとされる。これらの課題がクリアされれば、水上から水中までのシームレスなドローン活用による効率化、安全性の高い施設点検が実現される。
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