凸版印刷は、長年にわたって現地調査を続けてきた国際的なデザインの祭典「ミラノ・デザイン・ウィーク」のデザイントレンドを解説するプレミアムセミナーを開催した。講師には、昨年まで凸版印刷顧問を務めた梅崎健氏(現・武蔵野美術大学客員講師)を招き、ミラノサローネのCMFP(カラー、マテリアル、フィニッシュ、パターン)の潮流を今となっては貴重になった多数の写真でひもとき、今後のトレンド予測についても解説した。
凸版印刷は2018年9月5日、東京・台東区にある同社の共創空間「L.IF.E」で、初となる有料のプレミアムセミナー「MILANO DESIGN WEEK REPORT/1986-2018ヒストリー」を開催した。
「ミラノ・デザイン・ウィーク」は、イタリア・ミラノで毎年4月に開催され、メイン会場「フィエラミラノ」での「ミラノサローネ国際家具見本市」の他にも、市内で「フォーリサローネ」と呼ばれる建築や伝統工芸など、複数の展覧会やコンペティションが併催される。欧米では日本と異なり、建築家が家具のデザインを手掛けることは珍しくなく、世界中の著名な建築家の出展が毎回話題を呼んでいる。
凸版印刷 環境デザイン事業部では毎年、ミラノ・デザイン・ウィークを視察。ここでその年のCMFP(カラー、マテリアル、フィニッシュ、パターン)などの流行を調査し、毎年6月に発表する“化粧シート”の新柄に反映させている。
化粧シートは、樹脂フィルムにグラビア印刷を施したフィルム状の壁や床に貼る内外装材。凸版印刷では、住宅以外にも、ホテル・オフィス・商業施設といったコマーシャル分野でも導入提案を行っており、とくに色や質感にウェイトを置いた製品開発に注力している。その基礎とするべく、世界的なデザイン展を独自にリサーチし、流行を幾つかのキーワードに言語化して、新柄のコンセプトを決定。高意匠・高機能をうたう化粧シート「101エコシート」をはじめとする内外装材の新柄ラインアップを拡充させている。
プレミアムセミナーでは冒頭、生活・産業事業本部 環境デザイン事業部 クリエイティブ本部本部長・井ノ口清洋氏が、「当社では、建装材事業において長年にわたり、デザイン性と機能性に特化した化粧シートの開発をしてきた。その中で、いかに市場ニーズを先んじて提案できるかに重点を置き、世界のデザイントレンドをいち早く読み取ってきた。本セミナーでは、世界最先端であり続けたミラノ・デザイン・ウィークを30年以上にわたり、独自の視点で見つめてきた凸版印刷の集大成ともいえる調査レポートを披露する」と趣旨を語った。
講師は、2017年まで凸版印刷顧問を務め、現在は武蔵野美術大学客員講師の梅崎健氏。凸版印刷在職中にはミラノ・デザイン・ウィークの視察を長年担当し、デザイントレンドを常に追い続け、デザインを論理的に説明する手法を構築して商品開発に大きく貢献。同社のクリエイティブ事業をけん引してきた。
講演では、梅崎氏がミラノ・デザイン・ウィークの1986〜2018年の歴史を体系的に紹介。その変遷をみると、最初の1986年は、デザイングループ「メンフィス(Memphis)」がデザインや建築に影響を与えた“ポストモダン”の影響が色濃い作品が多く、1999年には一転してシンプルなミニマム化が台頭。2005年のアラベスク模様やシャンデリアの採用に代表される“ソフトバロック”による華飾への揺り戻しを経て、2018年現在は素材そのものの魅力を表現する“ユーザビリティ”の時代に入った。
全体を俯瞰(ふかん)的に観察すると、1980年代から1990年代までは“デコラティブ”のエリアで、2000年初頭から現在までは“シンプル”なデザインと大きく二分される。ターニングポイントとなったのは1999年。現在に至る基本スタイルは、1990年代後半に形成され、1999年に「ミニマルデザイン(ミニマリズム)」として確立した。今に至る人気のホワイトナチュラルやミディアムダークといった色が登場したのもこの年。
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