JR東日本は、鉄道施設のメンテナンスにロボットやドローンを導入して、業務効率化などの検証を始める。母体となるのは、120社を超える企業・団体が参画している「モビリティ変革コンソーシアム」。コンソーシアム内に設置された3つのワーキンググループで、ロボットの活用やスマートシティーの実現、駅からのラストワンマイルを利便化するDoor to Doorの推進にそれぞれ取り組む。
JR東日本は、2017年9月に設立した「モビリティ変革コンソーシアム」で、ドローンやロボット、センシング、ICTなどの新技術を鉄道事業に適用して、業務効率化やサービス向上、魅力的な街づくりなどを目的にした実証実験をスタートさせる。
コンソーシアムは、オープンイノベーションによりモビリティ変革を創出する場として、交通事業者、国内外メーカー、大学、研究機関など120社を超える企業・団体が参加。JR東日本が掲げる経営ビジョン「変革2027」を目標に、3つのワーキンググループ(ロボット活用WG、Smart CityWG、Door to Door推進WG)で、テーマごとに幹事社を置き、新しいテクノロジーの実証実験を進めていく。
このうち、ロボット活用WGは、サービスの品質向上、JR東日本グループ社員の作業安全性向上・作業効率化、メンテナンス業務の革新を目指したロボット活用に取り組む。Smart CityWGでは、街の特性に応じた移動機会や移動目的の創出と、駅および駅周辺の魅力度・快適性を向上させ、駅を核とした新しい街づくりを行う。Door to Door推進WGは、鉄道ネットワークを中心としたモビリティ・リンケージ・プラットフォームを構築し、出発地から目的地までの「シームレスな移動」の実現に取り組む。各WGには、サブワーキンググループが形成され、それぞれのテーマについて実証実験を行う。
メンテナンス分野をカバーするロボット活用WGは3つの取り組みに着手。幹事社に沖電気工業を置くグループは、ドローンを使った河床解析業務の検証を2019年1月からスタート。実験では、ドローンと測深装置を組み合わせ、河川橋梁(きょうりょう)の橋脚部分の河床状況を調査する。ドローンは、測深装置を運搬して、これを水面に降ろして測定。現状では時間と手間がかかっている河床の測深作業の効率化を図る。測深装置は、音波を水中に放射し、反射波を受信する機器で、ドローンに搭載できる小型軽量のものを開発する。
幹事に積水化学工業を置いたグループは、2018年11月から高架橋などの改修の際、塗装を行う面(素地)を研磨して仕上がりを良くする「自動素地調整ロボット」を開発する。素地調整を行うロボットには、仕上がり状態を定量化するセンサーが内蔵され、素地調整の定量的かつ効率的な作業が可能になる。将来的には、高架橋への足場を不要とする施工方法を確立する。
KDDIは2019年1月から、メンテナンス作業にドローンを導入して検証。線路内作業時の安全確認や架線・送電線などの電気設備のメンテナンスで省人化を図る。安全確認では、上空のドローンから、作業開始時または終了時に、線路上に支障物がないかなどを確認。架線・送電線といった電気設備に対しては、ドローン撮影で観測し、画像解析技術により不具合箇所を見つけ出す。ドローンとの通信は、LTE通信回線を使用することで、目視エリア外への飛行も実現させる。
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