VR/ARが描くモノづくりのミライ 特集
インタビュー
» 2018年09月03日 06時00分 公開

建設×VR/AR/MR:東急建設が進めるVR技術を駆使した安全衛生教育と建設業の魅力発信。企画・開発に携わった伊藤誠氏に聞く (2/3)

[宮城谷慶一郎,BUILT]

VIVEシリーズのハイエンドクラスHMDを採用

東急建設 伊藤誠氏

――Tc-VOWの特徴は

伊藤 開発にあたっては、バンダイナムコスタジオの技術支援のもと、ゲームコンテンツに取り入れられている感情や心理といった、人間の行動原理に影響を及ぼすストーリー展開技術を活用。これにより、建設現場の災害事故に至る過程をVR空間上でリアルに再現することに成功している。

 VR用の機材には、ハイエンドクラスでVR体験の自由度も高いHTC社のVIVEシリーズを採用し、3×3m(メートル)の空間を任意に動けるようにした。体験者は、頭部にヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着し、手にコントローラーを握る。足にもトラッカーを固定することで、VR空間の建設現場で実際に手足を動かしながら、より現実に近い認識下で学習ができる。これに加え、バックパックPCを背負うことで、コードレスによる一層自由な動きが実現し、没入感をもった記憶に残る疑似体験を可能にした。

 さらに、現場の作業事務所の会議室でも疑似体験できるなど、システムの持ち運びにも対応し、使用する場所を選ばないところもTc-VOWの特徴だ。

HMDをはじめとするVR用の機器
VRスペースとなる3m四方のベースステーション

――コンテンツの企画は

伊藤 当社の企画したコンテンツは、体験者がVR空間内で危ない箇所を探すのではなく、一連の現場作業をやり遂げることを目的としている。その作業の過程に不安全な状況を設け、それに気付かないと被災してしまうような内容とし、災害事故の主な原因である「気付き忘れによるミス」「横着する」といった、体験者本人が実際に起こしやすい不安全行動に対する注意喚起を図っている。

左から不安全な状況として設けた「足場ズレ」、無造作に置かれた「単管パイプ」
左から作業箇所と、転落時の視点

 提供中の「墜落・転落災害」は、約20mの高所の足場を想定し、音声アナウンスによるガイダンスに沿って、手足を動かしながらネットの取り付けやPコンの穴埋め作業を行っていく。仮に危険箇所の是正を怠った場合は、仲間を巻き込んだ墜落災害などを疑似体験することになる。時間は、およそ5分。VR空間内にもタイムリミットを表示し、体験者が焦ってしまうことで、危ないところを見落とすような効果も狙った。終了時には、不注意や未確認事項の回数結果を表示し、自身の見落としがちな傾向が分かるようにしている。

――これまでの体験者数

伊藤 本格的にシステムの提供を開始したのは2017年11月からで、これまでに体験した協力会社の作業員数は延べ150人を越える。2018年7月18〜20日に東京ビッグサイトで開催された「第5回 労働安全衛生展」では、会期中3日間で80人ほどの来場者に体験してもらった。今後は、当社支店にシステムを一つずつ置き、全国の現場で安全教育に活用していきたいと考えている。

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