CBREは、特別レポート「2020年のホテルマーケット展望―地方都市で高まるインバウンド需要とホテル開発動向」を発表した。札幌、名古屋、福岡で2020年までにホテル1.5万室が供給されるが、いずれの都市も客室は不足すると予測する。
事業用不動産サービス・投資企業のCBREは、札幌、名古屋、福岡の地方都市の供給動向を踏まえ、日本のホテル市場の見通しをまとめたレポートを2018年7月26日に発表した。
訪日外客数は2018年4月に、過去最速となる年初からの累計で1000万人を突破。このペースが続くと、2018年通年は2017年の2869万人を上回り、史上初の年間3000万人台への到達が見込まれる。政府目標値の2020年4000万人達成には、2018年以降で年平均12%の増加が必要だが、2018年5月時点でこれを上回る16%の増加率で推移しており、CBREでは目標達成の蓋然性(がいぜん)は高いとみている。
レポートでは、増加する訪日外客数の恩恵を受け、ホテル事業のパフォーマンスを示すRevPAR(販売可能客室数当たりの客室売り上げ)は上昇基調で推移。三大都市(東京、大阪、京都)以外の地方都市へも、インバウンド需要は波及しているとして、2015年以降は外国人延べ宿泊者数は三大都市の合計をそれ以外が上回っているという。
なかでも、ホテルの高稼働率が続く、札幌市、名古屋市、福岡市は、2016年の既存ストックに対し、2020年までに各年で18%、31%、30%もの客室数の供給が予定されている。
札幌・名古屋・福岡の2020年ホテルマーケットの需給検証では、2020年の政府目標値である訪日外客数4000万人を前提に、供給により増加するホテル客室数を考慮しても、客室不足になることが予想される。各不足数は、札幌が3500室程度、名古屋は2100室程度、福岡は1400室程度が足りなくなる。
札幌・名古屋・福岡の3都市で供給過多の懸念は低いとするが、宿泊機能以外の付帯施設を限定した「宿泊主体型ホテル」に偏っているため、競争激化を招く恐れもある。現状、地方都市では単身の出張需要をターゲットとしたホテルが新規供給の55%以上を占める。しかし、訪日外国人の多くは、家族や友人と同伴するため、より広い客室面積の「アッパークラス」や多彩な施設とサービスを提供する「フルサービスホテル」、3人以上の客室構成、長期滞在タイプなどが求められると分析する。
全国的にも、アッパークラスやフルサービスホテルは不足気味で、4スター以上のグレードは50軒ほどしかない。ホテルにおいても、宿泊そのものの体験の質や宿泊以外の体験がニーズとして高くなるとした。
2020年東京オリンピック・パラリンピックが、インバウンド需要のターニングポイントとみなされることは多いが、過去の五輪を振り返ると大会後には、中長期的にインバウンド需要は増加している。
また、世界的な潮流として、国際観光は増加基調にあり、なかでもアジア太平洋地域でのインバウンド需要は米国を超え、成長が著しい。今後もこの傾向は続き、日本のホテル需要は五輪後もさらに拡大すると予想した。
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