BEMSを導入する前に、知っておきたい「補助金制度」と「成功事例」基礎から学ぶBEMS活用(3)(1/2 ページ)

ビルの効率的な省エネ施策に欠かせないIT/IoT活用。本連載ではBEMSを筆頭に、あらためてその仕組みや導入のポイントなどを解説していく。第3回はBEMSを導入する際に活用できる補助金制度とBEMS導入支援事業の今後の展望について解説します。

» 2017年06月26日 07時00分 公開

 前回はBEMSアプリケーションの効果的な活用方法とそのメリットについて、具体例を交えて解説しました。今回は、BEMSを導入する際に活用できる補助金制度とBEMS導入支援事業の今後の展望について解説します。

BEMSへの期待と補助制度の変化

 BEMSの導入にあたっては、2002年度から10年間以上にわたって一般社団法人である環境共創イニシアチブ(2010年度までは新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施した「住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業(BEMS導入支援事業)」によって支援されてきました。本支援事業発足当時はBEMSの普及期にあたり、内容も主に大規模施設へのBEMS導入を主眼としたものでした。成果報告※1)では、BEMS単独でも4%程度の省エネ効果を発揮したことが報告されています。2008年を過ぎる頃には、BEMSの普及も進み、大規模施設においては不可欠なシステムとなりました。

 一方、中小規模施設におけるエネルギー管理は、2008年度の省エネ法改正をきっかけに課題として認識されはじめました。従来の施設単位の規制から企業単位での規制に変わり、一定規模以上の企業では中小規模施設も含めてエネルギー管理の対象となった他、電力需給環境の変化で電力ピーク対策がこれまでよりも強く求められるようになったため、BEMSの果たす役割はさらに大きくなりました。

 しかしながら、中小規模施設は大規模施設とは異なり、エネルギー管理の専門員が常駐していることは少なく、エネルギーデータの解析や省エネの制御設定も十分には行われていないことが多くなっています。さらに、規模が小さいため、サーバ導入などにかかる初期投資の確保も課題となります。

 これらの導入障壁を緩和しBEMSを中小規模施設にも普及させるため、「エネルギー使用合理化等事業者支援事業」が立ち上がり、2014年度からEMSと支援サービスを提供する事業者をエネマネ事業者としてリスト化し、公開しています。2017年度は「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金(省エネルギー投資促進に向けた支援補助事業のうちエネルギー使用合理化等事業者支援事業)」として、エネマネ事業者によるBEMS導入に対し、補助金を交付しています。

※1) 住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業(BEMS 導入支援事業)「平成17〜20年度補助事業者の実施状況に関する分析」成果報告書 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 2010年12月

BEMS設備導入に最大1/2の補助が適用

 2017年度からスタートした「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金(省エネルギー投資促進に向けた支援補助事業のうちエネルギー使用合理化等事業者支援事業)」(以下、同補助制度と略します)では、以下に該当する省エネルギー設備の導入に対し、支援施策として補助金が適用されます。

  • I 工場・事業場単位での省エネルギー設備導入事業……(ア)省エネルギー対策事業、(イ)ピーク電力対策事業、(ウ)エネマネ事業
  • II 設備単位での省エネルギー設備導入事業

 (ウ)のエネマネ事業は、単独または(ア)および(イ)との組み合わせで申請でき、その場合の補助率は1/2以内となります(エネマネ事業と組み合わせない場合は補助率1/3以内)。

 エネマネ事業とは、エネルギーマネジメントシステムを用いてエネルギー管理支援サービスを提供し、事業者(施設オーナーなど)と共同でより効果的な省エネルギー対策を実施する事業のことで、エネルギー管理支援サービスについては以下の通り定義されています。

  1. 省エネルギー計画の立案
  2. 省エネルギー計画の確実な実施
  3. 省エネルギー実績の把握と報告
  4. 追加的な改善提案の実施

 このように、同補助制度は継続的かつ専門的な支援を要求するものとなっています。

2017年度「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金(エネルギー使用合理化等事業者支援事業)」のエネマネ事業者登録要領より抜粋
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