前述の通り同補助制度が適用されると初期投資の負担を大幅に削減することができますが、他にも大きなメリットがあります。
同補助制度では、事業者と共同でエネマネ事業を実施する者をエネマネ事業者と位置づけていますが、エネマネ事業者の主な役割は補助制度対応の事務的な代行と、省エネに対する技術支援であり、専門スタッフのいない中小規模施設がこの部分をアウトソースすることでBEMS導入の実務的なハードルが下がるのです。具体的には、以下の役割はBEMS事業者が担うことになります。
さらに、センター(クラウド)システムの管理やエネルギー管理士の配置などもエネマネ事業者に求められています。
施設設立から20年以上が経過し、設備の老朽化が課題となっていた介護老人保健施設が「エネルギー使用合理化等事業者支援事業」におけるエネマネ事業を利用することで、初期投資を半分に抑えつつも設備の効率性を向上する改修を実現し、大幅な省エネでランニングコストを削減した事例を紹介します。
介護老人保健施設などのような中規模施設では、老朽化した空調や給湯設備による非効率な施設運用が課題となっているものの、なかなかまとまった改修予算を投入できないということがよくあります。
この「ヴィラかのや」 の事例では、まずエネマネ事業者側が運用実態を詳細に調査、把握した上で、実際の空調や給湯のニーズに合った設備構成を提案し、結果的に30%以上の大幅なエネルギー削減率を達成しました。導入のための経費においても、「省エネルギー効果・電力ピーク対策」「費用対効果」「技術の先進性」といった点でEMSと省エネ設備の導入の政策的意義が認められたことで、通常1/3の経費補助のところ、1/2の補助を受領しています。さらに、改修後3年間のエネルギー管理支援サービスによって、新規導入設備の運用もエネマネ事業者によって最適にサポートされることで、さらなる省エネとランニングコストの削減が期待されます。
2016年度までの同補助制度では、エネマネ事業においては「工場・事業場の省エネルギー率10%以上を達成する事業」という条件がありましたが、実際のところエネマネ事業を利用した多くの事業では20%を超える削減率を達成しており、BEMS導入の効果は顕著です。エネマネ事業による補助制度の適用を受けることで、この事例のように、少ない投資でランニングコストを大幅に削減する効果的な省エネ改修が実現できるのです。
2016年度までの「エネルギー使用合理化等事業者支援事業」では、EMSやエネマネ事業者の要件にデマンドレスポンスやスマートメーターへの対応が明示されていました。2017年度の同補助制度では、これらは明確には記載されてはいませんが、今後デマンドレスポンスがより一般的になった場合、エネマネ事業者がその支援業務を中心的に担うことは明らかです。
「エネルギー白書2016(資源エネルギー庁)」には、今後の省エネルギー社会の展望として、「エネルギーマネジメントシステムによる省エネ効果を大きく積み上げ、サードパーティー(第三者機関)による新たなエネルギーマネジメントサービスが本格的に普及することを見込む」と記載されています。これは現在、同補助制度においてエネマネ事業として実施している内容の延長線上にあるもので、これからの政府主導によるスマートグリッドなどの施策においても重要な役割が期待されていることを示しています。
エネルギー自給率がわずか6%とOECD加盟34カ国中、2番目に低い水準の日本においてエネルギー施策への取り組みは非常に重要な課題の1つです。BEMSを導入し、高効率な施設運営を実現することはコストメリットを生むだけでなく、エネルギーの課題解決に積極的に関与していくことにもなるでしょう。
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