BIMを筆頭に、建設業界に関連する最新技術の活用状況の現在と、今後の展望について解説していく本連載。第5回では建築家の小林博人氏、米田カズ氏に、「建築とIT」というテーマでインタビューを行った。
今回は、本メディアBUILTのテーマである「建築とIT」について、建築家の小林博人氏、米田カズ氏にインタビューを行った。小林氏は、現在慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授であり、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学でも教鞭を採っており、小林・槇デザインワークショップ、米SOM社の日本代表も兼任している。
米田氏は、現在は慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任助教であり、2016 年から小林氏の「ベニアハウスプロジェクト」に参加している。ハーバード大学の海外派遣教員として同大学の学生たちと伊東豊雄氏の「みんなの家」の建築に参加するなど、震災の復興プロジェクトにも関わってきた。
ベニアハウスプロジェクトとは、合板を用いて被災地の復興を主な目的として仮設的な建築を考えるプロジェクト。CNCルーターなどを利用して切り出した合板を組み立てていく簡便な工法によって、特別な工具やスキルを利用しなくても、誰でも家づくりが行えるというプロジェクトだ。コンピュータと接続されたデジタル工作機械を活用する、デジタルファブリケーションがプロジェクトの実現を支えている。
第一号は、2012年に宮城県南三陸町に建てられた地域の交流施設「南三陸ベニアハウス」。そして、第二号は宮城県石巻市前網浜の地元漁師のための集会所兼倉庫「前網浜ベニアハウス」だ。その後、ネパール、ミャンマー、フィリピンなどの発展途上国の被災地においても、プロの手や知識がなくても、人力だけで建設可能な建築としてベニアハウスを提案している。
ーーベニアハウスプロジェクトに、お二人は建築家としてどのようなモチベーションで参加されたのでしょうか?
小林氏 最初は、どうやって建築設計で復興に貢献できるかということを、建築家として真剣に考えていました。しかし現場に行ってみると、まず作る人がいない。材料も手に入らない。また、リーズナブルで廉価に、そして早く作れなければいけない。石巻にはもともと合板の会社が非常に多く、震災の被害が大きかった。早くて安くて作りやすいという条件、そして、震災の影響を受けて売れなくなった合板がたくさんあるという条件が重なったんです。地元の産業復興になることも分かったので、合板で仮設を作ることにしました。
米田氏 自分はアメリカ生まれで、日本に来たのが5年前。きっかけは伊東豊雄さんと一緒に岩手県釜石市で行った「みんなの家」というプロジェクトでした。これはハーバード大学と共同で行ったもので、大学の学生が帰国した時点でプロジェクトは終了したのですが、その後2016年に小林さんにベニアハウスプロジェクトにお声がけいただき、日本に残りました。震災で大きな被害を受けた東北地域に対して、まだやるべきことがあると感じたんです。
このプロジェクトでは、PC上で作成した設計データと工作機械で部材を切り出し、現場に運んでから施工を行うのですが、最初の参加したプロジェクトは全ての工程が3日で終わったんです。参加したことで自信にもなりましたし、新しいことも試すことができて、とても良い機会でした。
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