太陽光で建物のエネルギー収支がプラスに、竹中のZEB化改修で成果:省エネビル(2/2 ページ)
東関東支店のオフィスビルはZEB改修後、2016年5月から本格的に運用を開始した。経済産業省が発表しているZEBの定義を満たすには、以下の2つの条件をクリアする必要がある。
- 再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量(エネルギー消費性能基準)から50%以上の一次エネルギー消費量削減
- 再生可能エネルギーを加えて、基準一次エネルギー消費量から100%以上の一次エネルギー消費量削減
一次エネルギー消費量は1年間の合計で403MJ/m2となった。これは改修前と比較して71%削減できたことになるという。1つ目の条件はクリアすることができ、既に「Nearly ZEB」は達成できた。
1年間の創エネルギー量と消費エネルギー量の推移(クリックで拡大)出典:竹中工務店
オフィスビルには改修後、屋上に出力40kW(キロワット)の太陽光発電システムを導入している。同時に容量144kWh(キロワット時)のリユースタイプのリチウムイオン蓄電池を併設し、一時的に電力を貯蔵して有効利用できるようにしている。非常時にも活用でき、BCP対策でのメリットもある。なお、季節や日によって発電量が蓄電可能量を上回り、余剰電力が発生した場合は、東京電力に売電している。
1年間の運用の結果、太陽光発電による発電量の合計は417MJ/m2を記録した。つまり年間のエネルギー消費量403MJ/m2全てを太陽光発電によるエネルギーでまかなえたことになる。これにより、ZEB化を達成することができた。
竹中工務店では今回のZEB改修で導入した技術や設備は、「ZEB Ready」や「Nearly ZEB」などにも適用可能としており、今後需要が増加するとみられる省エネ改修の提案に活用していく方針だ。
- エネルギー消費が“正味ゼロ”のビル、実現にはまず50%の省エネが必須へ
2030年までに新築建築物の平均でZEBを実現する政策目標が掲げられる中、経済産業省では、エネルギー基本計画に明記されたZEBの政策目標達成のために、ZEBロードマップ検討委員会を開催。ZEBの定義やロードマップなどの検討内容を発表した。
- キーワード解説「ゼロ・エネルギー・ビル/ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEB/ZEH)」
夏になると各電力会社は節電を呼びかける。特に国内のほとんどの原子力発電所が停止した今夏は、各地で消費者が厳しい節電を強いられている。「ゼロ・エネルギー・ビル/ゼロ・エネルギー・ハウス」は、年間に消費するエネルギー量がおおむねゼロになるという建物を指す。実現すれば、無理に節電する必要がなくなるかもしれない。
- 目指すは全てが「0」の世界、未来の建物が実現
大林組は2014年4月、東京都にある技術研究所で、国内初の「ソースZEB」を実現するための工事を完了したと発表した。ソースZEBは、一般的なゼロエネルギービルよりもさらに進んだ取り組み。土木建築にかかわる全てのエネルギーを0にしようとする同社のマイルストーンの1つである。
- エネルギーを実質108%削減した木造建築、国内初のZEB評価
清水建設が設計施工を手掛けた「生長の家 茨城県教化部新会館」(茨城県笠間市)が、国土交通省の建築物省エネルギー性能表示制度「BELS」で一次エネルギー消費用が実質ゼロになるZEBとして国内で初めて第三者評価を取得した。既に確立した技術を活用し、コストを抑えながら実質的なエネルギー削減率を108%まで高めた。
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