東電とゼンリン、ドローンの安全飛行へ「空の道を創る」業務提携を発表

東京電力ホールディングスとゼンリンは、両社が持つインフラデータを組み合わせることで、ドローンの安全飛行を支援する「ドローンハイウェイ構想」実現に向けて業務提携を行った。

» 2017年03月30日 06時00分 公開
[庄司智昭BUILT]

「ドローンハイウェイ構想」の実現へ

 世界に先駆け“空の道”を創る――東京電力ホールディングス(東京電力HD)と地図製作会社大手のゼンリンは、2017年3月29日に開催した記者会見でこう述べる。

 両社は、東京電力HDが持つ電力設備、ゼンリンが持つ地図情報などのインフラデータを組み合わせて、ドローンの安全飛行を支援する「ドローンハイウェイ構想」実現に向けて業務提携を行った。2019年度に一部のサービスを開始する予定という。

左から東京電力HDの山口浩一氏、ゼンリンの藤沢秀幸氏

 「ドローンビジネス調査報告書 2017」(インプレス総合研究所)によると、ドローンビジネスの国内市場規模は、2020年度に1423億円に達すると見込まれている。2015年度の175億円と比較すると、約10倍だ。今後は、既に実用化されている農薬散布や測量だけでなく、物流や災害対応といった多くの分野へ普及拡大が期待される。

 2015年11月開催の「第2回 未来投資に向けた官民対話」では、安部首相が「早ければ3年以内に、ドローンを使った荷物配送を可能にすることを目指す」と発言したことでも注目を浴びた。一方で、首相官邸や姫路城にドローンが落下して社会問題に発展するなど、ドローンに対するネガティブなイメージも浸透しつつある。

 ゼンリン 上席執行役員 第二事業本部長の藤沢秀幸氏は「安全な飛行を実現するためには、気象情報や地図情報を用いた運行管理システムの構築が必要になる」と指摘する。ゼンリンは、これまでもドローン向けに空域情報を3次元化した地図を製作してきたが、運行管理システムの構築には「安全な飛行ルートが分かること、建物だけでなく鉄塔や電線などの位置も把握すること、長時間の飛行が求められる」(藤沢氏)と語る。

電力ネットワークを「空から見える道しるべ」に

 そこで、両社は“ドローンハイウェイ構想”の実現に向けて業務提携に合意した。具体的には、2019年度までに以下の取り組みを進める予定とする。

  • ドローンの飛行障害となるインフラ情報の3次元化(2017年)
  • インフラ設備点検に必要な誘導プラットフォームの研究、開発(2018年)
  • 充電設備を裕したドローンポートの開発(2019年)

 インフラ情報の3次元化では、送電鉄塔や架空送電線といったドローンの飛行で障害物となるインフラ設備の3次元データベースの整備を行う。前述したように、ゼンリンは日本全国99.6%の地図を保有し、建物の高さ情報を用いた3次元地図情報を整備済みだ。東京電力HDは送電鉄塔を約5万基、送電線の長さは地球半周に相当する約1万5000km、配電柱を約590万基、配電線の長さは地球8周に相当する約33万8000kmという電力インフラを持つ。これらのインフラデータが、ドローンハイウェイ構想に欠かせない。

 地上に張り巡らされた電力ネットワークを「空から見える道しるべ」として活用することで、目的地までの安全な自律飛行を支える空域を実現するという。

電力ネットワークを「空から見える道しるべ」に (クリックで拡大) 出典:東京電力HD、ゼンリン

 また、機体の充電や点検サービスを提供する「ドローンポート」も新たに整備。東京電力HD 新成長タスクフォース事務局長の山口浩一氏は、収益モデルに関して「ドローンハイウェイ構想を1つのプラットフォーム事業として捉え、ドローン事業者のデファクトスタンダードになることを目指す。3次元化した地図のシステムやドローンポートの使用料など考えられるが、具体的な収益モデルはこれから検討していく」と語る。

 まずは、2019年度から関東圏で一部のサービスを開始予定。今後は他のインフラ事業者との連携も見据えて、ドローンハイウェイ構想の普及を狙う――。

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