カーボンナノ構造体を用いたX線源は、従来のX線源で必要であった電子源用ヒーターやフィラメントが無いため、待機電力が不要で、X線発生時にしか電力を消費しない。今回、200kV(キロボルト)以上の電圧に耐えられる小型のX線管と高電圧駆動回路を新たに開発して、200keV(キロ電子ボルト)以上の高エネルギーX線を発生できるX線源を実現した。
またX線検出器としては、X線照射で発光する蛍光体と2次元光検出器を用いた光変換型X線検出器と、テルル化カドミウム半導体素子を用いた直接変換型X線検出器の2種類を開発した。今回開発したX線源と2種類のX線検出器は、全て平均消費電力が40W(ワット)以下であり、プラント配管検査用に開発しているロボット用の14.8V(ボルト)バッテリーで駆動できる。
今回開発のX線源とX線検出器からなる非破壊検査装置の性能を確認するため、X線源とX線検出器の間に1cm厚の鋼板を複数枚置き、鋼板の間に3mm(ミリメートル)の鉛文字を挟み込んでX線透過像を撮像したところ、1ショット0.1秒のX線照射で、光変換型X線検出器および直接変換型X線検出器ともに5cmの鋼板を透過して鉛文字の画像が得られたという。また、X線を複数回照射すればイメージング可能な透過厚を増すことができ、光変換型X線検出器では18ショットを蓄積して、7cm厚の鋼板を透過した画像が得られる。
同装置を用いることにより、プラントの配管など、厚みのある金属部材の減肉検査を高精度に実施することが可能になる。また、小型軽量でバッテリー駆動できることから、自動検査ロボットなどに搭載してインフラ構造物の検査現場での効率的な検査ができるようになる。
今後、同装置を化学プラント配管検査用のバッテリー駆動ロボットに搭載して、配管の減肉計測などの自動検査の実証試験を行う予定だ。また、他のインフラ構造物の非破壊検査への応用も検討している。
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